オンラインでの収益化やWebサイトの拡充の方向性で悩まれているスモールビジネスのオーナーのために、低コストで差別化できるコンテンツのアイディアと作成方法を紹介します。
今回はアメリカでの成功例を紹介しながら、人目を惹くコンテンツとしてAR(拡張現実)データの簡単な作り方も説明します。
CMSであるBiNDupを利用してインハウスでWebページを制作するメリットの1つは、デザインやコンテンツに関するアイデアをすぐに実行に移して試してみられることです。自社での運用を前提に読んでみてください。
コンテンツマーケティングとは「顧客に寄り添うこと」
コンテンツマーケティングの本質は、顧客が求める情報を継続的に提供することで喜んで(満足して)もらうことにあります。そうやって、信頼関係が生まれることで、商品を買ったりサービスを利用するなら、このお店(会社)にしようと思っていただけるわけです。
顧客が何を求めているかは、その声に耳を傾け、その立場になって課題を探したり問題解決の方法を考えるなどが必要であり、つまり顧客に寄り添うことです。実際には、個人商店やスモールビジネスのほうが、大企業よりもお客様に近いところにいるので、普段から顧客に寄り添った仕事をすることに慣れているかもしれません。
小田急ありがとうカードの事例
たとえば、私鉄大手の小田急電鉄は大企業の一員といえますが、個々の駅の改札や窓口では、毎日、乗降客と接する仕事が発生します。そうした身近な場所での印象が企業全体のブランドイメージに影響することもあるため、落とし物を届けた方に、写真のような「ありがとうカード」を渡しています。
これは直接カードを手渡すというアナログなコミュニケーションですが、実は、こうした小さな心遣いも顧客の喜びや満足度向上につながる、広い意味でのコンテンツマーケティングといえるのです。
広告では顧客の喜びや満足度向上を図ることは難しいですが、コンテンツマーケティングは効果が出るまでにやや時間がかかるものの、低予算でも行うことができ、一旦効果が現れ始めれば見返りが大きく長続きするのがメリットです。
スモールビジネスでコンテンツマーケティングを始めるには
以前に紹介した「コンテンツマーケティングの元素表」の要素をすべてバランスよく埋めていくことが理想なのですが、スモールビジネスの場合には、手近なところから始めて充実させていくことが現実的でしょう。
始めやすく続けやすいブログ
アメリカのブログに関する統計によれば、ブログを続けて21〜54回ほど更新すると、それだけで最大30%ものアクセス増加が見込まれるといわれています。
上手に集客する方法とヒント
SEOで集客:検索されやすいキーワードを含める
タイトルに検索されやすいキーワードを含めるなどのSEO(検索エンジンの最適化)を行い、記事に自らの業務分野のエキスパートであることを示す内容をさりげなく盛り込んでいくことです。
コンテンツマーケティングでは商品やサービスを全面に押し出して売り込むことは逆効果であり、あくまでも顧客やリード(見込み客)が知りたいと思える情報を提供することが基本となっています。
SNSで集客:ターゲットごとにメディアを使い分け
各種SNSは自分のお店や会社の存在感を高めるのに有効なコミュニケーションチャネルです。たとえば、ブログの更新情報をポストして冒頭部分を掲載するなど、それを見てブログのリンクをクリックしてもらえるようにすることで、相乗効果が生まれます。
しかし、ターゲット層によって利用するSNSが違っていたりするので、その点は注意してください。たとえば、10代、20代の男性と女性だけでも、図のような傾向が見られます。以前に紹介した動画配信のチャネルも積極的に利用してみましょう。
さらに中高年になると、Facebookなど比較的古くからあるSNSの利用率が高まり、若いユーザーは新しいサービスに飛びつきやすいため、自分のビジネスの対象者を見極めて、どのSNSに注力するかを考えてください。
メールで集客:メディアのリピーターになってもらう
ブログのアクセス数が増えてSNSでもフォロワーが付いてきたら、次にメールを使ったニューズレターの配信に登録してもらいます。内容は、季節ごとの挨拶や、新製品・サービスの紹介、利用法のチップス、他の顧客の声など、色々と考えられるでしょう。
メールを利用すると、受け手の興味に応じてパーソナライズされたニューズレターを送れるようになり、さらにブランドに対する親近感を持ってもらえるようになります。そして、ニューズレター内の記事の続きや、より詳しい情報はリンク先のWebページで見てもらうようにして、どの記事に反応したかを分析することが大切です。
前回、リード(見込み客)の獲得、育成、選別について書きましたが、登録者の反応や興味によって、その人が、どのステージにいるのかがわかるので、それを次の段階への誘導に利用できるようになります。また、ニューズレターが定期的(たとえば「週に一度、金曜日の夕方」など)に届く、SNSへのポストが毎日昼頃にある、など規則正しい情報提供もブランドへの信頼につながるので、きちんとスケジュールを組んで配信やポスト、更新を行うことも大切です。
最後に、ライバルの真似をする必要はありませんが、もしも気になるお店や企業で、自社ではトライしていないチャネルや見せ方があれば、それを自分なりに採り入れてみると視野が広がるのでおすすめです。
米国のスモールビジネスのコンテンツマーケティング事例
経営難からコンテンツマーケティングで復活
次に、アメリカのユニークなスモールビジネスのコンテンツマーケティングの例をご紹介します。2008年にアメリカを襲った景気後退で経営難に陥ったものの、コンテンツマーケティングに力を入れて見事に復活したRiver Poolsというファイバーグラス製プールの会社です。
たとえば、Webサイトのトップページでは、プールの形状や素材で迷っていませんか? と疑問を投げかけ、見込み客の注意を惹いています。また、ウイルス禍の影響か、プール業界のサプライチェーンが正常に機能していないようです。そこで、納期が遅れている旨の告知もあり、顧客に知らせるべき情報を優先しています。
ブログも充実しており、購読ボタンを設けて見込み客のメールアドレスを登録させる努力も忘れてはいません。
そして、下にスクロールすると、すぐに「ファイバーグラスプールのバイヤーズガイド」のダウンロードボタンがあり、ここでもメールアドレスの登録を促す仕組みです。このあたりは、まさに見込み客が求めていると思われる情報をプロの視点から提供することによって相手を満足させると同時に、自らがこの分野の専門家であるというアピールにもなっています。
さらにその下には、River Poolsが他のプール業者とは違うということを、製造工程、設置工事、製品保証という3つの観点から説明するページへのリンクが貼られています。これも、自分たちがこの分野のエキスパートであることを印象付けるコンテンツとなっています。
そして、River Poolsは定期的にプールの設置業者向けのウェビナーを開いたり、FacebookやYouTubeといったSNSでの情報提供にも力を入れていて、主に動画による顧客の声の紹介や、スタッフによる実用性とエンターテインメント性に富んだ映像が数多く公開されています。
無料で作れるARコンテンツ
最後に、コンテンツマーケティングにも応用できる、人目を惹くAR(拡張現実)コンテンツの簡単な作り方を紹介しておきましょう。ARコンテンツは、スマートフォンの画面に映し出された目の前の空間にリアルな製品を出現させて、実物と同じように様々な角度から見ることができるものです。
iPhone用のPolycam
Polycamという無料アプリを使って置物を3Dデータ化し、それをMacからVectaryというサービスを利用してiPhoneとAndroidデバイスの両方でAR表示する方法を紹介します。
Vectaryは、無料プランでもARデータのWebプレビューが可能ですが、自身のサイトに組み込むHTMLコードを発行するためには月額12ドルの有料プランにアップグレードする必要があり、以下の説明でも有料プランの画面を使っています。
Polycamは、一部のiPhoneでは内蔵のLiDARセンサーを使った連続スキャンもできますが、どのiPhoneでも可能な、複数枚の写真から3Dデータを生成する手法のほうが、細かく正確にデータ化できますので、その方法で作ることにしました。
撮影された写真が並んだ画面が現れたら、背景を無視して被写体だけを3Dデータ化する機能をオンにします。すると、被写体の複雑さに応じて5分から15分程度で、3Dデータをダウンロードできるようになります。
これは、そのデータをアプリ内でビデオ化したものだが、ディテールまで再現されていることがわかる。
Polycamの無料版ではGFTLという形式でのみデータのエクスポートができるので、これを保存しましょう。
まとめ
スモールビジネスにおけるブランドとは、「のれん」のようなものです。つまり、確立したブランドは信用や信頼のシンボルとなって、そのお店や会社の製品・サービスだから安心して購入できることを示してくれます。そのブランドを構築するために適しているものが、コンテンツマーケティングであり、単にモノやサービスを売るための施策ではなく、持続可能なビジネスのための基盤となるのです。
その意味では「のれん」を掲げてそれに恥じない商売をする、老舗と呼ばれるようなお店は、意識せずに(アナログの)コンテンツマーケティングを行ってきたともいえるでしょう。来店時の挨拶から、店内のしつらえ、的確なアドバイス、お見送りまで、そのすべてが「のれん」を支えてきたのです。
読者の皆さんも、ホームページ作成サービス「BiNDup」を使い、ぜひご自身の「のれん」(=ブランド)を作り上げていってください。多少の時間はかかっても、それだけの見返りがきっとあるはずです。
POINT
- 専門性や特性を示すコンテンツとして動画に注目。エンターテインメント性も忘れずに
- iPhoneとMacを使って、無料でARコンテンツが作れるサービスも
- 自社ブランドを確立するために自ら運用できるオウンドメディアは有効。