YouTubeで始める動画マーケティング|チャンネル登録を増やすコツとSEO対策
前回は、コンテンツマーケティングでも特に動画マーケティングに利用できる主要なSNSの特徴を比較しました。その中でも、全世界に20億人以上の視聴者がいるYouTubeは、その知名度の高さや世代を問わない親しみやすさで抜きん出た存在といえます。
YouTubeに投稿する動画の広告収入を得るYouTuberになるのは難しいとしても、本業を支えるマーケティングのためにYouTubeを利用するのであれば、ターゲットを既存の顧客や潜在的な顧客予備軍に絞ることができ、内容も得意分野の知識や経験を活かしやすいものです。そのため、動画のプロでなくとも、ある程度の成果を上げていくことが可能となります。
ただし、すぐに劇的な効果を期待するのではなく、地道にSEO(サーチエンジン最適化)対策を行い、半年から1年程度のスパンで登録ユーザー数やアクセス数を伸ばしていくことが必要です。
今回は、そのための基礎的なノウハウを共有するとともに、動画コンテンツ制作時に便利なアプリを紹介します。
動画サービスとコンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングにおいて、動画の利用はもはや常識といってよい状況にあります。サイバーエージェントの調査によれば、2019年に2,592億円だった動画広告市場は、2020年には3,289億円、2023年には5,065億円にまで拡大するとされており、消費者がインターネット上の動画による情報提供を積極的に受け入れていることは明らかです。
ようやく普及期に入った5Gの通信網もこれを後押ししており、4Gとの比較で最大20倍にもなる通信速度の遅延の少なさや、YouTubeを含めたSNSアクセスに伴うデータ消費をカウントしない携帯プランの登場などが、モバイル状態での動画視聴のハードルを下げています。
視聴者にとって動画は、文字情報と違って受け身で情報を取得できるために楽な面があり、共有・拡散する場合にも、テキストを読むような努力を相手に課すことがなく、気楽に勧められる面があるのです。
コンテンツマーケティングでは、情報を消費者のほうから取りに来てもらうことが基本ですから、その意味からも、魅力的で思わず見たくなるような動画を用意してWebサイトに誘導することが求められているといえるでしょう。
動画マーケティングにYouTubeを活用するメリット
たとえば、YouTube自体が公表している統計情報によると、新型コロナウイルス禍によって美容室の利用を控えた人たちが自分で髪を切る「セルフカット動画」を積極的に行うようになり、このカテゴリーの動画の平均視聴回数はそれまでと比べて130%の伸びを示しました。また、「自宅エクササイズ」に関連する動画は、同じく200%も増加したとのことです。
つまり、こうした動画をポストしていた美容室や美容師、エアロビクス教室などは、動画視聴回数を一気に伸ばし、知名度を上げるチャンスがあったといえます。YouTubeは、1日あたりの動画視聴時間が10億時間を超えていて、しかも、70%以上の視聴者がモバイル端末で再生していることから、ちょっとした空き時間に観ることができて、ターゲット層の興味に即した動画であれば、登録ユーザーを増やして再生回数を上げられる可能性があるといえるでしょう。
一方で、約7割のユーザーがYouTubeのアルゴリズムで推奨された動画を視聴していたり、視聴回数上位10%の動画が全動画の視聴回数の約8割、かつ、チャンネル登録者数上位10%の動画が全動画の視聴回数の7割を占めるなど、人気動画となるには、それなりに乗り越えるべき壁も存在します。
そういうこともあって、スモールビジネスでYouTube動画を活用するならば、大きなパイを狙うよりも、的を絞って既存の顧客のリピート率やロイヤリティを向上させた上で、少しずつでもその輪を広げていくことを心がけるほうがストレスもなく、動画制作も楽しんで行えるといえるのです。
YouTubeのSEO対策とは?
YouTubeは、元々、ユーザーの母数が多く、独自の動画検索も盛んに行われているので、一般的な検索結果に基づいて自前のWebサイトにアクセスしてくれる人を待つよりは、視聴者を誘導しやすい面があります。とはいえ、Webサイトと同様にSEOの対策をしておかないと、検索結果に反映されないことも事実です。
YouTubeには、YouTube Studio内に自身のチャンネルの視聴状況に関する情報をまとめたアナリティクスのページが用意されているので、これを参照しながら以下に説明するようなYouTube向けのSEO対策を施していくのがよいでしょう。
YouTube Studioのアナリティクスの活用法
再生数を稼ぐためのSEO対策
YouTube向けのSEO対策は、タイトルにキーワードを入れるなどの点で一般的なSEOと似たところもありますが、検索結果にはサムネイルのイメージも並ぶため、実際の視聴に結びつけるには、このサムネイルを工夫してアピールしやすいものとすることも求められます。
タイトル
まず、タイトルですが、本気で登録者を増やして再生回数を伸ばしたいのであれば、ターゲットユーザーを絞り込んだうえで、その属性(想定される性別、年齢層、家族構成、収入など)も意識しながら、決定することが重要です。たとえば、自家製パンを紹介する動画の場合、「美味しい新製品のご紹介」のような曖昧なものではなく「新食感パン登場!一番乗りは誰?」のように具体的で興味を惹くようなものとします。
タイトルを付ける際のポイントとしては、
- タイトルだけで動画の概要がつかめること
- 動画検索されそうなワードを含めること
- 重要なワードを前に持ってくること
が挙げられ、全体として他の動画のタイトルとの十分な差別化が図られていなければなりません。
サムネイル
サムネイルはグラフィックイメージですが、ここにも絵の一部としてキーワードを入れることで、イメージのみの状態よりもクリック率が高まります。ここでも視聴者が興味を持ちそうなワードを含めることが大切ですが、ゴチャゴチャしずぎてもわかりにくくなるため、シンプルな短めのキーフレーズをインパクトのあるデザインでまとめるのが理想です。
サムネイル内に自分の顔を含めるかどうかは目的にもよりますが、個人商店の商品・サービス紹介や、ガイダンス的な動画の場合には、本人の顔が見えているほうが視聴者も安心するはずです。その場合、大袈裟な表情はかえって逆効果となる場合もあるので、自然に接客しているような雰囲気が出せるとよいと思います。
いずれにしても、定期的、かつ、継続的に動画をポストしていくことが重要であり、そのためにも1つの動画に多くの内容を詰め込まずに、テーマを小出しにしながら5〜10分程度にまとめて、続きや関連動画を観たくなるように誘導してください。
スモールビジネスにおけるYouTube集客事例
ここで、いくつかのYouTube集客事例を紹介しておきましょう。必ずしも、万単位の視聴回数があるわけではありませんが、視聴数や登録者の増加のヒントがありそうなチャンネルを選んでみました。
うどチャンネル
静岡にある美容室が公開しているチャンネルですが、普段は2〜4桁の視聴回数ながら、13万回と、この中では特出した視聴数を記録した動画がありました。それは、バスケットボール漫画のスラムダンクの映画化決定に合わせて、登場人物の髪型を再現してみるという内容のものです。
動画自体もコミック調にするなどの工夫がなされており、髪型の再現によって技術の高さもアピールできていますが、やはりスラムダンクという人気漫画に関連づけたタイトルや、カットモデルが並んだサムネイル、企画の着目点などの相乗効果によって視聴回数を伸ばすことができたといえるでしょう。
ひろーずBakery
小さなパン屋を経営し、ご自身もパン職人のオーナーが、パンやスイーツのレシピを公開しているチャンネルです。
視聴回数は3〜5桁とバラツキがありますが、直近のものと(図で赤枠で囲った)1年前に公開されたものを比較すると、ジワジワと視聴数が増えていくことが理解できるかと思います。また、パンを売る以前にパンの魅力を知ってもらいたいという姿勢が、コンテンツマーケティングの目的に沿っているといえるでしょう。
もちろん、基本的なパン作りの技術があってのことですが、サムネールの写真やそこに配されたキャッチも大いにアピールするものとなっています。「1日◯◯売れた」、「プロが教える」、「基本の」、「子供が囲みたくなる(子供を喜ばす)」などのワードの使い方も、参考になると思います。
カケハシチューブ
キッチンカー事業主としてフードトラックを運営しているオーナーによるノウハウの共有チャンネルです。
新型コロナウイルス禍によって飲食店ビジネスの先行きが不透明な中でフードトラックが注目されていますが、素人には知識がないけれども興味のある話題を地道に動画としてまとめ、継続的に公開しています。
ここでも、視聴回数が時間とともにロングテールで伸びていることがわかりますが、一時的な話題ではない普遍的な内容であれば、すぐに古くならずに情報としての価値を保てることが理解できるでしょう。動画編集のテンポや構成も参考になります。
動画コンテンツ制作に役立つアプリ
さて、ここで魅力的な動画コンテンツの制作に役立つ無料のiOS/iPadOSアプリを2つ紹介しておきましょう。
1つ目は、1台のiPhoneで同時に2つの動画を撮影できるDoubleTake by FiLMiC Pro。そして、2つ目は、複数のiPhoneで録画時のシャッタータイミングを同期できるSVCam です。
DoubleTake
DoubleTakeは、iOS 13.0以降がインストールされたiPhone/iPod touch、iPadOS 13.0以降がインストールされたiPadに搭載されているすべてのカメラの中から任意の2つを選んで、同時に撮影が行えます。
ポイントは、マルチカメラシステムを搭載していないiPhoneでも、最小限、外向きのメインカメラと自撮り用のFaceTimeカメラで同時撮影が可能になる点です。というのは、商品紹介などの動画では、話し手の顔と手元のアップの両方を見せたくなることもあります。DoubleTakeを使うと1台のiPhoneを顔と商品の間にセットして、1回撮影するだけで両方の素材を揃えることができ、効率アップにつながるわけです。
撮影結果は、2つの独立した動画ファイルとしても、また、いわゆるPiP(ピクチャー・イン・ピクチャー)形式の1つの動画ファイルとしても保存可能なので、前者であれば動画編集ソフトを使って切り替えや合成を行えますし、後者の場合には、そのままYouTubeにアップすることで編集の手間が省けることになります。
SVCam
SVCamは、同じ被写体を異なる角度から写したり、複数の話し手の顔を切り替えながら見せたりして、動画に変化を持たせたい場合に便利なアプリです。
このような編集を行うときには、複数のiPhone/iPadのシャッターを同時に押して録画をスタートした動画ファイルを使わないと煩雑になります。SVCamをインストールして、同じマジックワード(シャッターを同期するデバイスを見分けるためのコード)が設定されたiPhone/iPadは、どのデバイスのシャッターボタンをタップしても同時にカウントダウンが始まり、5秒後に録画がスタートするのです。そして、録画を止めるときも、どのデバイスのシャッターボタンでも操作でき、5秒後に停止します。
注意点としては、利用するiPhone/iPadはすべて同じWi-Fiネットワークに接続していることが必須なので、屋外ではポケットWi-Fiやテザリングを利用する必要があること。そして、カウントダウン開始の時点では各デバイスの秒数表示にズレが生じていても、実際の録画スタート時までに修正されるということです。
ただし、あくまでもシャッターボタンを押すタイミングの同期なので、プロが求めるような動画のフレーム単位での同期は保証されていませんが、実用上は問題ない範囲といえるでしょう。
ちなみに、SVCamの開発企業が、美容室のプロモーション動画を想定して制作した多視点映像がこちらになります。東京オリンピックの体操競技のテレビ番組内などでも多視点映像が利用されていましたが、このような動画も、iPhone/iPadの数を揃えられれば作ることができるので、知人や同僚の協力を得て、トライしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
性急な成果を求めるのは禁物ですが、ターゲット層が知りたいと思える内容を継続的に発信することができれば、YouTubeを使った動画マーケティングは一定の効果をもたらしてくれるはずです。その意味では、瞬発力がのものをいう短距離走ではなく、持久力で勝負する長距離走だと考えて取り組むのが良いでしょう。
前回も触れましたが、ホームページ作成サービスBiNDupに付属するサーバーディスクスペースを動画データで圧迫してしまうのはもったいない話ですし、継続して動画をアップするのであればなおさらです。動画のホスティングはYouTubeに任せて、それをBiNDupでスタイリッシュにサイトに埋め込み、両者のメリットをうまく活用して集客に結びつけていってください。
POINT
- YouTubeのSEO施策はサムネイルも大切。画像だけでなく狙いたいキーワードを入れる
- 動画はテーマごとに5分程度にまとめて、続きや関連動画を観たくなるように誘導する
- 動画の撮影は、適したカメラアプリを上手に使うと動画編集の手間が省ける