環境に左右されない、いわゆる「新しい生活様式」の中でウェビナーの重要性は増す一方です。ウェビナーとは、本連載の最初に採り上げた「コンテンツマーケティングの元素表」の中にも出てきましたが「ウェブベースのセミナー」を略した造語で、いわゆるオンラインセミナーのことを指しています。
ウェビナーのほうが短くて呼びやすいので、ここでも用語としてはウェビナーを使って話を進めることにしましょう。

▽参考記事

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今後もニーズが高まるウェビナーとは

国土が広大なアメリカでは、一般的な企業でも以前から採用するところがあったウェビナーですが、日本では在宅勤務と同じく、新型コロナウィルスによるビジネスや生活の変化の中で注目度が高まってきたところがあります。

また、ウェビナーと聞くと、何か大掛かりなイベントのようなものを想像されるかもしれませんが、システム的には、すでにあちこちで始まっているオンライン飲み会の仕組みとほとんど変わらないといえます。違うのは、ウェビナーがビジネス寄りで、明確なテーマや目的を持って行われるという点です。いわゆる企業だけでなく、個人商店やフリーランスデザイナーのような個人事業主でも、顧客や潜在的なクライアントに対して伝えたいこと、アピールしたい知識や技能などがあれば、ウェビナーを行う意味があるでしょう。
ウェブナーの様子
そこで今回は、ウェビナーのやり方や、そこで使うと便利なサポートツールをご紹介することにしました。

なお、ウェビナー自体を有料ビジネス化することも考えられますが、その場合には、どうしても課金方法について考えなくてはなりません。そこで、ここでは、あくまでも本業について広く知ってもらい、そちらで収益を上げるための販促ツール的な位置づけでウェビナーを捉え、参加費は無料という前提で話を進めていきます。

定番になるだけの機能が充実しているZoom

ウェビナーを始めるには、まず、配信のためのプラットフォームを選ぶ必要があります。一方的に映像を送り出すだけならば、YouTubeのライブ機能などを利用することもできますが、セミナー形式で話の途中や最後に質疑応答などを入れたり、朗読会のように主宰者以外の人も積極的に参加するようなことを想定すると、双方向のやり取りができるビデオ会議システムを利用するほうが適切です。

全世界的に新型コロナが蔓延したために、ビデオ会議システムも古参企業から新規参入社まで、市場には様々なサービスが存在するようになりました。しかし、本来は1対1や少人数でのビデオチャットを想定して開発されたものと、元から大人数でのビデオ会議を念頭に開発されたものとでは、やはり接続性や機能の面で差があります。その意味から、現状で筆者がお薦めしたいのは、すでに定番ともいえるZoomです。

Zoomは、少し前に本社の設定ミスによって中国内のサーバーが一部で使われるなど、セキュリティの不安が発生したことがありましたが、その後の対応によって収束し、さらに安全に使えるような改良も進んでいます。国家機密に関わるような情報(!)をやり取りするのであれば別かもしれませんが、一般的なウェビナーレベルで問題が生じることはないといって差し支えありません。

Zoom画面
Zoomは、オンライン会議システムとして事実上の標準といってよいほど普及しており、機能的にも充実しています。

その上で、Zoomが良いと思える理由としては、

  • 会議室と呼ばれるオンラインミーティングの場を簡単に設定可能
  • 無料版でも最大100人、有料版では同1000人までの接続をカバー(ただし、当然ですが表示品質はネットワーク環境に依存)
  • 参加者はアカウントの設定や登録が不要
  • 参加者への告知が楽
  • 資料の提示やプレゼン画面の共有に対応
  • バーチャル背景をサポート

といったことが挙げられます。

他のビデオ会議システムでも、この中のいくつかが当てはまるものはあるものの、すべてをバランス良く備え、しかも安定して使えるという観点から見ると、どうしてもZoomが本命ということになるでしょう。

Zoomは有志のマニュアルも豊富

Zoomの基本的な使い方に関しては、公式サイトでは日本語メニューの参照先が英語ページになっているなどしてわかりにくいのですが、有志が作成した様々なオンラインマニュアルがネット上にアップされているため、そちらを見ていただくほうが理解が早いでしょう。

中でも、Zoomの普及を推進するオンラインプロジェクト「Zoom革命」によって整備された日本語マニュアルは、利用するデバイスや、参加者と運営者といった立場によってページが分かれているので、わかりやすいと感じます。Zoomは頻繁にアップデートされていて、マニュアルの更新が間に合わないことがあるかもしれませんが、その場合でも根本から大きく変わるわけではないので、実際の画面と見比べれば理解できるはずです。

ウェビナーを行う場合には運営者向けのクイックマニュアルを参考にして、参加者の皆さんには、あらかじめ個々のデバイス環境に応じて適切なマニュアルに目を通してもらうようにしておけば、スムーズに運用できると思います。

フリープランにおける40分の壁と対策

Zoomは、基本機能を無料で使えますが、制約なしの利用は少人数での参加時に限られます。具体的には、2人でテレビ電話的に利用する場合や、運営者が有料プランに加入していれば、セッション時間は無制限となりますが、無料プランで3人以上、つまり会議やウェビナー的なことを行おうとすると1回あたりのセッションが40分間に限られるのです。

といっても、1度セッションを終了して、新たなセッションを改めて開始することは可能であり、その間に一定の時間を空ける必要もありません。さらに、初回のみ40分を超えたときに、Zoomからギフトのメッセージが画面に現れ、次回のセッションの時間制限が解除されます。これらはZoom側が決めていることなので、そのような使い方をしても問題ありません(少し面倒ではありますが…)。

zoom gift画面
Zoomの無料プランでは、40分間に制限された連続利用時間を超えると、初回に限り次回セッションの時間制限を解除する旨の、ギフトと呼ばれるメッセージが表示されます。

そこで、無料でウェビナーを開く場合には、こうした制約を積極的に活かすようにすると良いでしょう。たとえば、40分ごとに5〜10分の休憩を挟むのも、ひとつの方法です。人間の集中力には限界がありますから、このやり方は理に叶っているともいえます。また、思い切って最初から40分で完結するような内容で構成してみることもお薦めです。そのほうが初めてのウェビナーを行いやすく、中だるみもなく続けられるメリットがあります。

しかし、いずれにしても、初めて参加される方のことを考えて、進行には余裕を持たせてください。理想的には、本番とは別にZoomの接続チェックだけを行うセッションを事前に設けたり、40分間のすべてをウェビナーの内容で埋めずに、最初の5分ほどは接続時のトラブル対応に当てられるように準備しておくといった心づもりが大切です。

ちなみに、参加者がZoomに慣れていない場合、できればパーソナルコンピュータではなく、機能が限定されたスマートフォンやタブレットのZoomアプリからアクセスしてもらうほうが、操作などがわかりやすくなります。そして、質疑応答時間以外は、参加者側のスピーカーや場合よっては映像もオフにしてもらうと、ネットワークの負荷が低減され、動きなどがよりスムーズになるでしょう。ただし、話をする上で、参加者の姿が見えているほうがやり易いのであれば、映像だけオンにしてもらいます。

反対に、運営者側は、様々なコントロールが行えるパーソナルコンピュータ上のZoomアプリを利用するケースが多いので、以下の説明でもそちらの画面を用いることにしました。

プレゼンテーションや画面表示を共有する

ウェビナーでは、用意したプレゼンテーション画面などを見せることが一般的です。もちろん、話術が得意という人は話だけで済ませることもできますが、ウェビナーに限らずオンラインのコミュニケーションは、物理的な空間を共有して行う場合と比べて参加意識が希薄になりがちなので、ビジュアルを工夫して参加者を飽きさせないことが重要といえます。その意味で、Zoom画面にプレゼンテーションや写真・動画を表示することは、とても重要です。
Zoomでは、コンピュータの画面をそのまま参加者に提示できる(スマートフォンやタブレットでも、方法は少し異なりますが可能です)ので、普通にアプリケーションを利用する感覚で、プレゼンテーションや写真・動画を共有することができます。方法については、図を参照してください。
画面共有
Zoomのミーティングやウェビナー中にウィンドウ下端の「画面を共有」をクリックします。すると、共有できるアイテムの一覧が表示されます。基本的には、起動されているアプリケーションのウィンドウの内容を選択的に共有できる仕組みです。目的のウィンドウのサムネール(ここでは、プレゼンテーション)を選択して、「画面の共有」ボタンをクリックすると、共有が始まります。
画面共有
プレゼンテーション画面を共有した様子を示します。自分のコンピュータ画面に選択されたプレゼンテーションが表示されると同時に、参加者のデバイス(ここでは、iPhone)の画面に同じ画面が表示されます。共有を終了する場合には、「共有の停止」ボタンをクリックしてください。なお、先の画面共有を始める画面で「ホワイトボード」を選択すると、電子的なホワイトボードを共有して、その場で自由に図やイラストを描くこともできますので、色々と試してみてください。

バーチャル背景を利用する

バーチャル背景は、カメラに写る自分の背景を任意の画像で置き換えることができる便利な機能で、Zoomの大きな特徴のひとつといえます。この機能のおかげで、自宅からオンライン会議に気軽に参加できるという人もいるほどです。
確かにオンライン会議に参加する際に、家の中で見苦しくない背景を探すのは簡単でなかったりします。しかし、バーチャル背景を使えば、どの部屋のどんな壁でも任意の背景に置き換えることができるため、気後れせずに参加することが可能です。またセミナールームのような雰囲気を演出するなどの用途にも応用することもできます。

なおバーチャル背景を自動認識で利用するためには、「デュアルコアで2GHz以上のインテル コア i5/i7(もしくはAMDの同等品)相当のプロセッサ」が搭載されている必要があります。最近のAppleのMacintoshやiPhone、iPad、中堅以上のPCやAndroidデバイスであれば利用可能と思いますが、たとえば人気のMacBook Airの場合でも最安値のエントリーモデルはプロセッサがインテル コア i3(デュアルコア、1.1GHz)で非対応となるので、注意が必要です。

しかし利用しているデバイスが、バーチャル背景の自動認識に対応していない場合でも、緑の無地の布や紙を自分の背景に貼ることで、緑色の部分を別の画像で置き換えるグリーンスクリーン機能が使えます。また、コンピュータ上での利用に限られますが、Zoomよりもハードウェア要件が低いSnap Cameraというアプリと連動させることで、インテル コア i3 2.5GHz(または、AMD フェノム II 2.6GHz)以上のプロセッサを搭載した製品であれば、Snap Camera側のバーチャル背景を利用できる場合があるので、こちらの方法も後述します。

ちなみに、先日、インドからのデザイン系のZoomウェビナーに参加したときに、目に留まったバーチャル背景利用のアイデアがありました。それは、プレゼンテーションの背景と話者のバーチャル背景に同じグラフィックスを使うというものです。こうすると、画面全体に一体感が生まれるので、読者の皆さんもぜひ試してみてください。
バーチャル背景の設定方法と、インドのデザイン系ウェビナーの様子を、図で示しておきます。バーチャル背景
バーチャル背景は、「設定」メニューを選択すると表示されるパネルで「バーチャル背景」をクリックすると、プリセットされたイメージから選べるようになります。また、右端の「+」マークのクリックによって、自分で用意した写真やイメージファイルをバーチャル背景に追加することも可能です。この図の大阪の風景やビジネスジェットのキャビン内写真(ホンダが提供しているバーチャル背景用イメージ)は、筆者が追加したものです。
なお、グリーンスクリーンを用意できる場合には、バーチャル背景の設定ウィンドウの下端にある「グリーンスクリーンがあります」にチェックを入れることで、利用するデバイスの性能によらず、バーチャル背景が利用可能になります。

プレゼン画面
このように、プレゼンテーションの背景と話者のバーチャル背景に同じ画像を利用すると、ウェビナーの画面に一体感が生まれます(図は、インドのDesignUpカンファレンスのウェビナーより)。

UDトークとの連携で深まる理解

さらに、ウェビナーで話している内容に対して、自動的に字幕が付加されるようにすると、耳に障害のある方にもわかりやすくなり、何らかのネットワーク障害で音声が参加者に届かない場合でも内容を伝えることが可能となります。

Zoom標準の機能では、人間がその場で入力したテキストが字幕として表示されますが、国産のサードパーティ製品であるUDトークと組み合わせることによって、自動で音声認識されたテキストを表示できるようになります。

UDトークはiOS/Android向けのモバイルアプリの形で提供されているコミュニケーション支援ツールで、Mac/Windows上で動く連携アプリもありますが、Zoomの字幕機能と連動するのは、iOS版Android版の最新バージョンのみとなっています。

具体的な連動のさせ方については、UDトークの公式情報がこちらにありますので、参照してください。

なお、UDトークは、基本無料で利用できますが、無料プランではサーバー側で音声情報の収集が行われ、サーバーの負荷に応じて連続発話の時間制限がつきます。信頼できる開発元なので音声情報が悪用されるような危険性はなく、音声認識精度向上のために利用されるだけですが、機密性の高い内容を扱う場合には音声情報の収集や発話時間制限のない有料プラン(最小課金で2,800円/週)を選択すると良いでしょう。また、発話時間制限のみを解除する有料プラン(同240円/月)もあります。

UDtalk字幕
UDトークとZoomを連動させると、ウェビナーの画面内にほぼリアルタイムで音声認識された字幕を自動的に付けることができます(写真はUDトークの公式サイトより)。

Snap Cameraでバーチャル背景を実現する

さらに、これはコンピュータ上のWebブラウザ(Chrome)からZoomを利用する場合(Windowsの場合にはアプリ版のZoomでも可)に使える機能ですが、Snap CameraというAR(拡張現実)機能を持つカメラアプリと連動させると、Zoomのカメラに写る自分の顔に仮想的なメイクアップを施したり、Zoomよりも低いハードウェア要件のコンピュータでもバーチャル背景を利用することが可能です。

 少し前まで、Macのアプリ版のZoomではセキュリティの観点からSnap Cameraなどの外部カメラアプリと連動できませんでしたが、ZoomアプリのVer.5.0.4で問題が解決され、Windows版共々、利用可能となっています。
 なお、以下のSnap Cameraを使ってバーチャル背景を利用する場合の基本的な流れは、Macの画面による説明です。

無料でできる、Zoomを使ってウェビナーを実施する方法
Snap Cameraのサイトにアクセスして、Downloadをクリックします。

無料でできる、Zoomを使ってウェビナーを実施する方法
ライセンスに同意するチェックをつけ、電子メールのアドレスを入力して、自分がロボットではないことを示すチェックを入れます。指示に従ってロボットではないテストをクリアするとファイルがダウンロードされるので、インストールしてください。

無料でできる、Zoomを使ってウェビナーを実施する方法
Snap Cameraを起動し、アプリのカメラ利用などを許可すると、このような画面が表示されます。検索フィールドに”Office Background”と入力して、検索結果として表示されたサムネールをクリックし、気に入った背景を選びます。このとき検索項目を”Makeup”や”Beauty”にすると、背景の代わりにユーザーの顔自体に演出を施すメイクアップのフィルターなども利用可能です。

Snapcamera連動
Snap Cameraを起動させた状態で、Zoomアプリを開きます。「設定」メニューを選択すると表示されるパネルで「ビデオ」をクリックし、「カメラ」のプルダウンメニューから「Snap Camera」を選択すれば、Snap Cameraで設定された状態の映像をZoom内で利用できるようになります。

ウェビナーの告知方法とコンテンツマーケティングへの活用

このように、ウェビナーは思っているよりも簡単に行うことができます。そして、「習うより慣れろ」で、回を重ねるほど自分に合ったやり方のノウハウも蓄積され、よりスムーズに進行できるようになるでしょう。

しかし、すべてのウェビナーにとって重要なのは、潜在的な参加者に興味を持ってもらうための告知です。もちろん、ウェビナー自体が軌道に乗ってくれば、個々の回の最後で次回のお知らせを行うこともできますが、本来のウェブページやブログ、SNSなどを通じてウェビナーの情報提供や予告を行っておくことが求められます。

そのためにも、ホームページ作成サービスBiNDupを利用して印象的な告知ページを用意し、事前の参加登録などをした人のメールアドレスなどに、ウェビナーの会議IDや会議室名を送るような仕組みを作っておきましょう。

そして、Zoomの有料プランでは録画機能も利用できるので、より本格的に取り組む場合には、過去のウェビナーの様子のまとめのページ(アーカイブ)を自分のサイト内に用意し、いつでも見られるようにしておくことも可能です。このようにすると、それらの映像を観た人が興味を持ち、ウェビナー自体の参加者を増やせる可能性が高まり、サイトの流入に貢献するコンテンツマーケティングにもなるため、こちらも検討することをお薦めします。
BiNDupサービスサイト

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ウェビナーの具体的な進め方や収益化の手段については以下で詳しくご紹介しています。

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  • POINT

  • 企業に限らず個人でもウェビナーは積極的に活用できる注目のコンテンツ
  • 双方向でやり取りすることを前提としたツールを選ぶと良い。Zoomは機能が充実
  • アーカイブをWebサイトに残すことでコンテンツマーケティングにもなる

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