リモート会議でよく見られる現象に、話し手の視線がこちらを向いていないということが挙げられます。画面表示の中心とカメラの位置がズレていることから生じる問題で、よほど気をつけていいないとカメラ目線を維持できません。
一方で、mmhmmを使ってリモートプレゼンテーションをされている方の中には、KeynoteやPowerPointなどのプレゼンテーションツール内で再生された動画の音声が、画面の向こうの相手に届いていないという状態に見舞われた方がいるかもしれません。
今回は、これらの問題を解決し、リモート会議やWebページで利用するプロモーション動画の制作をグレードアップするためのノウハウをご紹介します。
リモートでの視線の問題を解決するカメラ
「相手の目を見て話す」ということは、コミュニケーションの基本です。子どもの頃から、そのように言われて育ってきた人もいるでしょう。また、プレゼンテーションなどの際にも、原稿に気を取られ過ぎずに聴衆の人たちとアイコンタクトすることの重要性について耳にしている方も多いかと思います。
しかし、その肝心の目を見て話すことやアイコンタクトが、オンラインのミーティングではなかなか思うようにできません。それは、他の参加者の顔が画面の中央付近に表示されるのに対して、話し手の顔を捉えるカメラが画面の縁にあるので、人間の自然な反応として、画面のほうを見てしまうためです。この問題は、コンピュータやスマートフォン、タブレットデバイスの設計が根本から変わらない限り、これからもずっと消えずに残っていくことでしょう。
ニューノーマルの時代のカメラCenter Cam
それでは、ニューノーマルの時代には、目を合わせないコミュニケーションに甘んじなければならないのでしょうか?実は、同じ悩みを抱えていたアメリカのイアン・フォスターという発明家が、その解決策をクラウドファンディングで実現しています。
その名もCenter Camというこの製品は、見ての通り、まさにコロンブスのタマゴ的な発想でUSB接続の外付けカメラ自体を画面の中央に(あるいは、どこにでも)配置させてしまうものです。
実は筆者は、すでに別のクラウドファンディングでCenter Camプロジェクトの支援を行い、出荷通知も受け取っているのですが、この原稿執筆までに到着しなかったため、イアン・フォスターさん自身が公開しているイメージを使っています。しかし、構造自体は単純なものなので、説明通りに機能してくれるはずです。
また、Center Camは専用に開発された製品なので、撮像ユニットのサイズも最小限で極力画面表示を妨げないように作られていますが、表示が多少見にくくなっても構わなければ、市販の他のWebカメラとフレキシブルなアーム素材などを組み合わせて似た環境を自作しても、同じような効果が得られます。
mmhmmアプリと連動する使い方
いずれの場合も、mmhmm(ニュース番組のような映像を簡単に作れるアプリ)のウィンドウ右上にあるカメラ設定の「FaceTime HDカメラ」(モデルやOSによって表示は異なります)を接続したカメラ名に変更してください。そうすると、mmhmmの入力用カメラとして利用できるようになります。
ちなみに、Center Camの解像度は1920×1080ピクセルのHD仕様なので、ほとんどのPCの内蔵カメラと同等かそれ以上の高精細なものです。利用している製品によっては、画質向上のための周辺機器としても利用できるでしょう。
▼mmhmmの使い方の詳しい記事はこちら
Mac本体だけでアプリの音を自在にミックス
mmhmmは進化のスピードが早く、以前の記事からのわずかな期間にも、細かなインターフェースの改良や機能の追加が行われています。
たとえば、前のバージョンではmmhmm内で既存のプレゼンテーションファイル(KeynoteやPowerPoint、PDF)を利用するためには画面共有しか方法がありませんでしたが、最新版ではそれらのファイルを直接インポート(読み込み)できるようになりました。ただし、インポートされたファイルはクラウド上でスライドの1枚1枚がイメージに変換され、改めてmmhmm上にダウンロードされる仕組みです。したがって、プレゼンテーションアプリで設定したビジュアルイフェクトなどまで再現されるわけではない点には注意が必要です。
そのため、プレゼンテーションを完全な形で見せたい場合には、従来通り、mmhmm内での画面共有を利用することになります。その際に、プレゼンテーション内で音の出る動画やアニメーションを利用していると、その音がリモート会議の相手には聞こえないことに気づいた方もあるかもしれません。それではビジネスプレゼンテーションの効果が半減したり、リモート授業で教材のプレゼンテーションの内容が伝わらないこともありうるでしょう。
これは、個々のアプリケーションレベルでは音が再生されていても、Zoomなどから呼び出されたmmhmmでは、mmhmmが直接処理している音声(通常は、話し手の声)しか再生されないために起こる現象です。この問題の回避策としては、マイクミキサーなどの周辺機器を利用する方法もありますが、ソフトウェアのみで解決するほうが、簡便で自由度も高いといえます。
そのための製品がLoopbackというユーティリティです。
最新のmmhmmではインターフェースもやや変更されているので、まず、プレゼンテーションをmmhmmで画面共有する方法を簡単におさらいすると、スライドショーを(全画面ではなく)ウィンドウ内で再生しておき、そのウィンドウをmmhmmから呼び出すという手順になります。
Loopbackを使って音声を出力する方法
さて、LoopbackはmacOS内部の仕組みに働きかけてアプリ間の音のミキシングを可能にしているので、インストールするにはシステムレベルの認証が必要となります。一方で、MacintoshのハードウェアやmacOSは世代ごとにセキュリティ面を強化しているのが現状です。そのため、Intelチップを搭載したMacとM1チップを搭載したMacとでは、少しだけインストールの手順も異なります。
具体的には、LoopbackのコアとなるACE(Audio Capture Engine)のインストールが、Intel Macの場合にはシステム設定から許可を与えるだけで完了しますが、M1 Macではセキュリティレベルを少し緩める必要があるのです(しかし、Loopbackの開発元も、それが不具合の原因にはならないと明言し、筆者も問題なく利用しています)。
説明は英語になりますが、どちらの場合もLoopbackのインストーラーの指示に従って作業を進めれば、問題なく完了すると思います。
Loopbackの操作自体は、ウィンドウ内にミックスしたいアプリ(この場合には、mmhmmとKeynote)を登録し、それぞれをアウトプットのチャンネル(これがLoopbackから出力される音声となる)と線で結ぶというものになります。
また、プレゼンテーションアプリからの音声が自分のMacのスピーカーから再生されると、それをマイクが拾ってエコーがかかったようになり、聞き取りにくくなるので、この構成でプレゼンテーションを行う場合には、イヤフォンとイヤフォンマイクを利用するようにしてください。そして、LoopBackのSourcesとMonitorsに、それぞれの「+」ボタンをクリックして、接続したイヤフォンとイヤフォンマイク(図では、AirPods Maxをつないでいます)を追加し、図のように線で結んでおきます。
さらに、Monitorsの「MacBook Pro(←製品名はお使いのものになります)のスピーカー」設定はオフにしてください(オンにすると、自分の声がMacのスピーカーからも聞こえて、リモート会議などの邪魔になるためです)。
そして、最後にZoomなどのリモート会議アプリの設定ダイアログで、マイクの選択を「Loopback Audio」に変更すればセッティングは完了です。これでプレゼンテーションからの音声が、リモート会議などの相手にも聴こえるようになりました。
まとめ
このように、広い世の中、しかもデジタル技術でつながったこの世界では、探してみると様々な問題に対する解決策が存在していたりします。Center CamやLoopbackも、そうした解決策に他ならず、すぐにその恩恵を受けられるハード&ソフト製品だといえるでしょう。
Center Camのようなカメラを使い、Loopbackを利用してmmhmmから呼び出したプレゼンテーションファイル内の音声も含めた映像を録画できるようになれば、BiNDupで作ったサイトで再生する製品/サービス紹介のプロモーション動画も、視聴者を見つめながら、よりリッチなコンテンツとスムーズな語りで効果を高めることができるのです。
どちらも、1万円を少し超えてしまう投資にはなりますが、リモートプレゼンテーションをそれなりの頻度で行ったり、短いインターバルでプロモーション動画を制作しているBiNDupユーザーであれば、その価値は十分あると思います。ちなみに、LoopBack Audioは試用のために20分間は無料で利用可能なので、実際に使ってみてから判断してもよいでしょう。
POINT
- オンラインでも違和感なく表現力を発揮するハードやソフトが続々と登場
- ノウハウをプロモーション動画の制作にも活かしてみよう
- まだローカライズされていない海外のサービスも積極的に利用して差別化を