今回は、マーケティング・エキスパートのアンディ・クレストディナが提唱する理想のコンテンツマーケティングの実現に必要な18要素のうち、後半の9要素について解説します。
前半の9要素がお店やブランドについて知ってもらい(認知)、さらに深く知りたいと思ってもらう(興味)ことが目的であるのに対し、後半の9要素は製品やサービスの購入や導入を考え始めた(検討)人たちの背中を押し、実際に顧客になっていただく(決定)ために必要なパートです。
そのためには、自分たちが対象となる製品やサービス分野の専門家として信頼に足る存在であることが、様々な角度から理解できるようなコンテンツを用意することが求められます。
具体的にどのようなコンテンツが望まれるのか、ご自身のビジネス内容を念頭に置きながら読み進めてみてください。
▼コンテンツマーケティングの18要素の中の前半の9要素は以下をご覧ください。
検討段階と決定段階をカバーする9要素
コンテンツマーケティングに必要な18要素の中の後半の9要素と略称は、次のようなものになります。
10 プレスリリース(Pr)
11 ビデオ(Vi)
12 ウェビナー(Wb)
13 インタビュー(Int)
14 リサーチ(Re)
15 ホワイトペーパー(Wt)
16 ケーススタディ(Cs)
17 ブック(Bk)
18 eブック(Eb)
これらの9項目は、消費者が顧客へと変わっていく中で通過する、認知、興味、検討、決定の4段階のうちの検討と決定の段階に相当します。具体的には、プレスリリースからケーススタディまでが検討段階、ブックとeブックが決定段階です。これらに該当するコンテンツに熱心に目を通していただける読者は、実際に商品やサービスを購入・購読する可能性が高くなっているといえるでしょう。
では今回も、それぞれを具体的に見ていきましょう。
製品やサービスの検討と導入を促すコンテンツ
プレスリリース(略称:Pr)
一般にはマスコミ向けに流す、新製品やお店・会社の活動に関する情報を指しますが、ある程度のアクセス数があるサイトの場合には、そのような情報を掲載するための専用のセクションをWebサイト内に設けて、興味を持ってくれたメディアの担当者やライターに閲覧してもらうというスタイルを採ることもできます。
また、プレスリリースの文章は、そのままニュースサイトなどに掲載できるように、客観的な書き方をすることが望ましく、そのようにして編集担当者の負担を減らせれば、採用される率も高まるでしょう。
プレスリリース単体で、消費者の興味を直接惹きつけることには難しい面もありますが、一度、客観的な文章でまとめておけば、再編集や再加工を行ってブログポストなどに転用することも容易になります。
チャンスがあれば、影響力のあるブロガーや編集者にダイレクトなメッセージを送るなどしてコネクションを作り、リリース内容を掲載してもらえるように働きかけるようなことも行ってみてください。
ビデオ(略称:Vi)
レシピサイトの情報提供の手法が、テキストと写真によるものから、動画によって視覚的に手順を紹介する形式へと拡大していることからもわかるように、ビデオは効果的な情報提供手段となっています。見る者を惹きつけるエンゲージメントの効果も高いですし、テレビショッピングに見られるような即買いを促す力も秘めているコンテンツです。
唯一の弱点は、サーチエンジンでは動画の内容の解析ができないため、ビデオコンテンツのみでは検索によるアクセス数の増加を見込めないということですが、これは、そのページに動画のきちんとした説明やキーワードを配することで解決できます。
ブログポストにビデオを埋め込むとエンゲージメントが高まりやすくなりますし、もしニューズレターを発行しているならば、その中に、ビデオのサムネールにプレイボタンのアイコンを貼り付けたイメージを含めて、実際のWebページへのリンクを埋め込むことで、そこからのアクセス流入を増やすことが可能です。
ビデオの実例〜レッドブル
エナジードリンクで有名なレッドブルは、「すべてがマーケティング」と豪語するほど、マーケティングに力を入れています。中でもビデオコンテンツの充実には目を見張るものがあり、独自のTVアプリまで用意して動画配信を行なっていることからも、ビデオの重要さを理解している企業だとわかるでしょう。
ウェビナー(略称:Wb)
日本では耳慣れない言葉かもしれませんが、海外ではポピュラーなWeb経由のオンラインセミナーを、略してウェビナーと呼んでいます。大きな企業では自前の配信システムを利用するところもありますが、一般にはウェビナー専用の有料サービスが用いられたり、簡易的には動画配信サービスやSNSのライブビデオ配信を利用して行うこともできるでしょう。
自社の製品やサービスに興味を持った見込み客の立場からは、場所や時間を気にせず気軽に受講できるメリットがあり、ウェビナーの提供者にとっては、受講希望者の登録の際などに同意に基づいてメールアドレスを収集できる点が魅力です。
さらにウェビナーを録画しておくことで、後日、それをブログポストに再利用したり、eブックに埋め込んでダウンロードしてもらうなど、多角的な活用が可能となります。
インタビュー(略称:Int)
本来は自社の製品やサービスに関連する特定分野の専門家に対するインタビューを意味していますが、店舗などではお客様の声をまとめて記事化することも考えられます。その際には、ブログポストのほうにインタビューのテーマや質問事項を掲載し、そこからリンクを貼って、実際のインタビューコンテンツに誘導すると良いでしょう。また、もしSNSで多くのフォロワーを持つ人が顧客であれば、そのインタビューを掲載することで、エンゲージメントできる層が大きく広がります。
いずれの場合でも、本人の了解が得られれば、プロフィールの紹介やインタビューに答える触りの部分だけはショートビデオにまとめてコンテンツの冒頭に埋め込むことで、最後まで読んでもらえる確率を高めることが可能です。
リサーチ(略称:Re)
リサーチとは研究のことですが、自社の製品やサービスを作るにあたって地道な調査や試作、テストなどを行っているのであれば、それらの内容を紹介することによって、消費者からの信頼を高められるようになります。そのため、コンテンツマーケティングの18要素を提唱しているアンディ・クレストディナ自身も、「リサーチコンテンツこそが、コンテンツマーケティングにおいて最もパワフルな情報提供の形式である」と考えているのです。
リサーチコンテンツをまとめる作業は、比較的気軽に書き込めるブログポストなどに比べて大変かもしれません。しかし、きちんとした内容を提供できれば、その分だけ得られる信頼感も大きくなります。そして、新たにリサーチを始める際には、それをプレスリリースの形で外部に発信し、準備段階から注目を集めることでエンゲージメントを高めていけるのです。
リサーチの実例〜きこりんの森
住友林業グループのきこりんの森は、子どもでも楽しめ、教育的価値も高いコンテンツを提供することで、木の持つ魅力を多くの人々に知ってもらい、ブランドに親しんでいただくことを考えて作られているサイトです。その中の「木の実験・観察 研究室」は、肩の凝らない参加型のリサーチコンテンツとして木の魅力を効果的に伝えています。
ホワイトペーパー(略称:Wt)
日本では白書と呼ばれるコンテンツで、あるテーマについての現状分析と将来の展望をまとめた報告書を意味しています。政府が国力や産業に関する情報を刊行する場合などにも用いられますが、コンテンツマーケティングでは、メリットがわかりにくい製品などに関して、しっかり説明を行って理解していただく場合などに有効なコンテンツです。
一度、ホワイトペーパーとしてまとめた内容を分割、再編集してブログポストに流用してもよいですし、イラスト、写真、チャートなどを追加してeブック化するのも有効な活用法といえます。
ケーススタディ(略称:Cs)
自社の製品やサービスを利用している人たちのポジティブな事例を紹介し、分析を加えることで、読者にも購入や採用を促すためのコンテンツが、ケーススタディです。できれば、何らかの問題を抱えていた人が、その製品やサービスを使った結果、それを解決できたというようなストーリー性を持たせることができると、説得力が高まるでしょう。
ケーススタディにはブログポストからのリンクを行い、その中でデータを示す場合には、できるだけ具体的な数字を盛り込むと購入や採用につながりやすくなります。
ケーススタディの実例〜EDGE & LINK
健康医療機器メーカーでもあり先進的なセンシング&コントロール技術の企業体でもあるオムロン株式会社のEDGE & LINKは、インタビューやインフォグラフィックも充実している一方で、自社製品の導入によって問題解決に成功した事例を数多く紹介しています。また、そうした記事の中にも動画を採り入れて、臨場感を出している点にも注目です。
ブック(略称:Bk)
インターネットが普及し、デジタル情報が飛び交う世の中になっても、紙の書物には人々が信頼を寄せる不思議な魅力があります。ときに、その信頼度は、あらゆるコンテンツの中でもトップクラスとなるほどです。
1冊の本にまとまるような内容を一気に書き下ろすには時間も労力もかかりますが、継続的に、あるテーマに沿ったブログポストを行った結果を、自費出版などの形で書籍化すれば、比較的実現しやすいかもしれません。書籍の形にまとめることができたら、その導入部分などを継続的にブログポストで紹介することによって、本自体の購入にもつなげられます。
eブック(略称:Eb)
ホワイトペーパーよりも気楽に読むことができ、ブックよりも少ない情報量でも成立するコンテンツがeブック、つまりPDF形式などで提供される読み物です。資料性が高く、プレゼンテーションの内容を言語化して印象的なグラフィックスを加えるやり方で制作することもできます。
ブログポストやランディングページにeブックへのリンクを設け、メールアドレスなどを登録した読者にのみファイルをダウンロードさせるのも、ポピュラーなやり方です。
eブックの実例〜くらしの良品研究所
おなじみの無印良品を運営する株式会社良品計画は、顧客とのコミュニケーションの中から見えてきたくらしのヒントを「くらし中心」という小冊子にまとめて配布していますが、それをeブック化したものを同社のコンテンツサイト、くらしの良品研究所からダウンロードできるようにしています。こうすることで、店舗が近くにない顧客や無印良品のオンラインショップの利用者に対して、有用な情報を伝えているのです。
まとめ
今回取り上げた要素の中で特に重要であり、これからも重要度が増していくことが予想されるものが、ビデオコンテンツです。しかも、ビデオコンテンツは、最近の機材の進歩と低価格化、および動画共有サイトの普及によって、比較的手軽に用意できるコンテンツともなっています。
また、電子的に制作して配布できるeブックはともかくとして、紙の出版物にあたるブックは、それなりの規模の法人でなければ、対応することは難しいかもしれません。しかし、個人商店やスモールビジネスであっても、それなりに話題性のある製品やサービスを扱っているならば、いわゆるマスコミに取材される機会を得て、その出版物を利用する方法もあります。
たとえば、レストランや宿泊施設などで、閲覧用として、その店舗やホテル・旅館などが紹介された地域情報誌などを見かけたことはないでしょうか? このような機会にめぐりあうには、常にSNSやオウンドメディアのWebサイトを利用して新鮮な情報を発信し続け、出版社の企画担当者の目に留まるように心がけることが重要といえます。メディア向けのプレスリリース的なものも、続けることができれば有効でしょう。
そのためには、Webサイト全体のデザインを整えやすく、更新も容易な環境が必要となりますが、制作ツールである「BiNDup」を利用することで、コンテンツマーケティングに適したオーサリングを楽に行うことができるのです。
▼テンプレートから制作した実例
HTMLやCSSの知識がなくてもテンプレートから自在に作成できる。サイト内にブログが設置できるほか動画の組込みも簡単。
POINT
- 注目度が高いのは動画コンテンツだが、検索対策のためにページ内にキーワードを入れるのを忘れずに
- リサーチコンテンツこそ、最もパワフルな情報提供の形式である
- 紙のコンテンツは信頼度を得るために見逃せない