オンラインコミュニケーションのための新たなサービスとして、少し前から話題となっていたClubhouse。iPhone(iPadも可)専用でアプリへのメンバー登録は招待制、話された内容は録音もメモも禁止というように制約だらけですが、トークを始めるのも聴くのも無料かつ簡単な操作で行える手軽さが受け入れられ、全世界で800万ダウンロードを記録する人気となっています。
今回は、このClubhouseをスモールビジネスで顧客とのエンゲージメントを深めるツールとして使うことを考えてみます。
デジタルテクノロジーでマイナスをプラスに!
新型コロナウィルス禍は、飲食店や美容室、あるいは他の接客を伴うスモールビジネスに少なからぬ打撃を与えました。プラス、マイナスで考えれば、やはりネガティブな影響のほうが大きいと言わざるを得ませんが、職種によっては、今まで必要を感じなかったリモートワークに移行してみたら、通勤に伴うストレスがなくなり、仕事の効率も上がったというようなポジティブな効果も生まれています。
先日も、あるテレビ番組で、近隣の大型スーパーに客を奪われて倒産寸前だった家族経営の小さなスーパーが、こだわりのフルーツサンドをSNSを通じて広め、コロナ禍でも多くの顧客を増やすことに成功したという話題を採り上げていましたが、これもデジタルテクノロジーによってピンチをチャンスに変えた例といえるでしょう。
リモートワークで高まるコミュニティの価値
さて、リモートワークなどで自宅に居ることが多くなり、会社の周辺よりも地元で飲食や買い物を済ませる機会が増えたことで、ニューノーマルの社会では、コミュニティの価値が高まると考えられています。その流れで、フリーペーパーやコミュニティラジオなど、地元密着型のメディアも、より意味のある存在となってくるはずです。
しかし、そうしたメディアを自ら立ち上げようとすれば大変ですし、既存のメディアを利用してビジネスの告知や宣伝を行うには、それなりの費用がかかったり、取材を受けるにしても、配布や配信のタイミングもメディアの都合に合わせることになります。そこで活用したいのが、無料で好きな時間にトークを発信できるClubhouseです。
コミュニティや顧客のオンライン交流の場
Clubhouseを「音声SNS」や「オンライン談話室」、「オンライン居酒屋」と捉える人もありますが、開発・運営元のAlpha Explorationでは「カジュアルなドロップインオーディオ会話スペース」と呼んでいます。
ドロップイン(Drop in)は「ふらっと立ち寄る、遊びに来る」という意味です。その通り、簡単にオンラインの会話スペース(Clubhouse内では「Room」と呼ばれます)を作って、知人を呼んだり、様々な人がトークに参加できるようになっています。
Roomの種類は、登録者の誰もが参加できる「オープン」、自分がフォローしている人だけが参加できる「ソーシャル」、自分で選択した人だけが参加できる「クローズド」の3種類があるので、トークの用途や目的に応じて選択することが可能です。話した内容は、その場限りのもので、過去のアーカイブなどもありません。
いうなれば、ネット上に、親しい人だけ、知っている人だけ、あるいは相手を選ばずに、聴いてもらえる自分だけのコミュニティラジオ局を開くことができると考えてみてください。それが、Clubhouseだといえるでしょう。
スモールビジネスにおけるClubhouseの活用
個人経営の店舗やスモールビジネスでClubhouseを活用するならば、コミュニティや顧客との関係を深めて常連やリピーターとして支えてもらうための、オンライン交流の場として考えるのが最も適しています。
今のところ、インターフェースの表示は英語のみですが、習うより慣れろで、使っているうちにわかってきますし、ネット上に日本語の解説サイトも色々と誕生しているので、使い方で困ることはないはずです。
レギュラー開催しやすい敷居の低さ
今では、Zoomなどのリモート会議/ウェビナーサービスや、FacebookやYouTubeなどのSNSを使ってライブ配信ができる時代になりましたが、依然として動画配信は敷居が高いと考える人も少なくありません。実際の配信は簡単にできるとしても、顔が映るとなると構えてしまったり、恥ずかしかったり、それなりの準備をしないと気が済まなかったりするのは、仕方がないともいえます。
ところが、Clubhouseは音声だけのコミュニケーションなので、極端な話、起き抜けで寝癖がついていても、パジャマ姿でも、お風呂の中からでもトークできてしまうわけです。これは主宰者だけでなく参加者も同様で、ともかく気構える必要がありません。
凝り性の人は、専用のマイクなども用意してトークの音質を高めようとしますが、元々、iPhoneのマイク性能やノイズキャンセル機能は優れているので、それ1台だけあれば、いつでもどこでもRoomを開設してトークを始められるのです。
もちろん、オープンなRoomであれば、誰でも、世界中のどこからでもトークに参加できるため、北海道のある喫茶店のマスターが、客が来るまでのおしゃべり空間としてRoomを開き、常連や遠く離れたお店のファンの人たちと雑談を楽しんでいるような例もあります。店番をしているときにも、そのように親交を深めることができる点が、Clubhouseの魅力といえるでしょう。
店と顧客、顧客同士の関係を深める招待枠の融通
先に、Clubhouseへの登録は招待制と書きましたが、このことがサービスに特別感をもたらし、潜在的なユーザーを惹きつけたことは間違いありません。
招待を受けるには、相手が自分の電話番号を知っている必要があるため、たいていはiPhoneの連絡先に登録されている知り合いからの招待を待つ形になります。招待を受けると、4桁の数字がメッセージで送られてくるので、それを自分のClubhouseアプリに入力したのちに、必要な設定を済ませるという流れです。登録方法の詳細は、ネットで「Clubhouse 登録」などのキーワードで検索すれば、やり方を開設したページが出てきます。
登録が完了した人には、招待枠が2つ付与されるので、それを使って新たに知り合いなどを招待することができる仕組みです。2つの招待枠を使い切っても、Roomを開設したり他のRoomに参加していると招待枠が追加されるため、Clubhouseをアクティブに活用すればするほど、多くの人を招待できるようになります。
こうした招待制はClubhouseの制約の1つですが、逆に招待枠を融通しあって登録者を増やすことで、店と顧客、あるいは、顧客同士の関係を深めることも可能でしょう。その場合、電話番号を共有することになるので、気心の知れた関係でないと難しい面もありますが、店が顧客リストの一部として管理し、招待枠が増えるごとに希望者を募って招待すれば、多少の時間はかかっても、身近なリスナーのグループを構築することができるはずです。
ある程度の人数が集まったら、Clubhouseに申請して許可されれば、「Club」と呼ばれる公式のオンラインコミュニティを立ち上げることも可能になります。申請方法などは「Clubhouseのクラブの作り方」でネット検索すると見つかるので、機が熟したらClubを作ってみるのもよいでしょう。
Webページとの連動でセールスにつなげることも可能
ちなみに、音声コミュニケーションとなるClubhouseでは、たとえばWebページのURLなどを簡単に共有する方法がありません。そのため、Clubhouse上で物販などを直接行うことは難しいのですが、唯一、考えられるのは、アプリ内のプロフィールに設定した自分のTwitterとInstagramのアカウントへのリンクを利用することです。
つまり、そのリンクを利用してTwitterのツイートを参加者に見てもらい、そのツイート内に自社のWebページや外部の通販サイトなどのリンクを貼っておくことで、間接的にセールスにつなげられるようになります。
もちろん、参加者が、顔見知りや身近なコミュニティの人であれば「お店(あるいは会社の)のWebページを見てください」でわかるでしょうから、そのひと言でアクセスしてもらえるはずです。
参加者にWebページを見てもらいながら、リアルタイムで音声による商品やサービスの説明を加えるようなことも、Clubhouseならば楽に行えるので、試してみてはいかがでしょうか?
まとめ
Clubhouseは、日本でもまずIT系のビジネスパーソンなどが飛びつき、芸能界でもRoomを開くタレントなども出てきました。一方で、すでに飽き始めた人たちもいるという記事を掲載する週刊誌もあります。しかし、それはYouTuberのような収入を直接得る手段が用意されていなかった(今後、数ヶ月の間に、チップやチケット販売、Clubの参加者に対するメンバーシップ付与などを通じて課金できるオプションを実装することは、発表されています)ので魅力を感じなかったり、単に新し物好きの人たちが、ちょっとかじって離れていっただけといえるので、気にする必要はありません。要は、自分に合ったメディアかどうかが大事なのです。
何より無料ですし、基本的にトライして失うものは何もないので、体験してみることが一番といえるでしょう。
そして、BiNDupで作ったWebページを使ってClubhouseのRoom開設の告知をしたり、トークテーマの募集を行ったり、何回か先までのスケジュールを公開する。あるいは、逆にClubhouseのトークでWebページへの誘導や更新のお知らせをしてみるなど、両者の連携による相乗効果を狙うと良いと思います。
Clubhouseは「百聞は一見にしかず」ならぬ「百読は一聞にしかず」のメディアなのです。
POINT
- 常連やリピーターの顧客との関係を深めるオンライン交流の場として最適
- サービスの招待性を活かすことでコミュニティの繋がりを深めることにもつながる
- Clubhouseは「百聞は一見にしかず」ならぬ「百読は一聞にしかず」のメディア