字幕やテロップ付きの動画が簡単に作れる編集アプリ「Clips」

前回は、すでに撮影してある素材を、短時間でスタイリッシュな動画にまとめあげてくれるQuikを採り上げました。今回は、(撮影済み素材も使えますが)その場でライブ感を活かして撮影しながら、キャプション(字幕)付きの動画が簡単にできあがる「Clips」を紹介します。
▽前回の記事はこちら

スマホで撮影した動画を簡単に編集!高機能なスマホアプリQuik

iOSアプリ、Clipsとは

Clipsは、Appleが開発したiOSデバイス用のアプリです。Android向けにも似たものがないか探したのですが、残念ながら見つけることができませんでした。
様々なメーカーがハードウェアを作っているAndroidのスマートフォンの場合、性能や機能、あるいは搭載しているOSのバージョンに差が生じがちで、アプリ開発の際にも機種を限定する必要があったり、互換性の確保が難しかったりします。前回採り上げたQuikは、そうした壁を乗り越えてiOSとAndroidを両方サポートしているだけでなく、MacとWindows用のデスクトップ版も用意され、高い機能性と互換性を提供できています。しかし、特に最新のAR技術を利用するようなアプリは、マルチプラットフォームでの提供が難しい場合もあるのです。

AppleのiPhoneも、新しいアプリで古い機種がサポートされないことはありますが、Clipsの場合には、iOS 13.x対応のモデル(2015年発売のiPhone 6s/6s Plus以降)であれば利用可能です。また、説明中に出てくるAR技術を応用したアニ文字は、Face ID対応モデル(iPhone X以降のTrueDepthカメラ搭載機)で使うことができます。

では、今回も詳しい説明の前に、Clipsの概要紹介動画をご覧ください。

自撮りビデオに向く機能の数々

Quikでは最初に写真アルバムが開きましたが、Clipsはいきなり自撮り画面になります。もちろん、保存済みの素材も使えますが、まず自撮り画面が現れることや、ナレーションがそのままキャプションになることからも、このアプリが自分で話しながら商品やサービスの説明を行う動画制作に適していることがわかるでしょう。

自分のアバター、アニ文字を使う

また、Clipsの大きな特徴の1つが、対応するiPhoneを使ってアニ文字(自分と同じ表情でリアルタイムに動く3Dフェイス)を利用できる点です。この機能により、顔を出して話すのは恥ずかしいとか、動画を撮るたびに身支度を整えるのは面倒という人でも、vTuber(ブイチューバー=進行役として、自分の代わりに3Dの分身モデルを出演させるユーチューバー)のようなイメージで動画を制作することが可能となります。

Clips
Clipsアプリを開くと、すぐにビデオ撮影のための基本画面になります。実際には自分の顔が写りますが、このようにアニ文字にしたい場合は、虹色の星形ボタンをタッチしてください。

アニ文字
すると、被写体のアレンジ画面に移動し、「アニ文字」から自分のアバターや他のキャラクターを選択することができます。

自撮りビデオに向く機能の数々

背景だけ変化する演出

ところで、冒頭のClipsの概要紹介ビデオの中には、人物の背景だけが変化する合成の様子も出てきます。このような演出はテレビの天気予報などでも見かけますが、従来は、青や緑一色の背景を用意して、その色の部分に別のイメージを合成するクロマキーという方法で行われていました。しかし、それほど大きな背景を準備するのは大変ですし、ライトの当たり方が合成に影響することもあったのです。

Clipsでは、アニ文字と同様にTrueDepthカメラを使って人物の背景の位置関係を把握し、どのような背景でも、その領域だけをイメージ抽出して変更することが可能なため、手軽に利用できます。もし、撮影場所の背景を変更したい場合には、基本画面で「シーン」を選び、20種類の背景の中から好みに応じて選んでください。
 ただし、同じTrueDepthカメラを利用するアニ文字との併用はできませんから、シーンの変更かアニ文字のどちらか1つを選んで使うことになります。

フィルタを使って演出

 さて、続いて「フィルタ」を選んでみましょう。これは、実際の顔かアニ文字かを問わず、様々な画材や映像の効果を付加できる機能で、「オリジナル」(フィルタなし)を含めて19種類の中から選べるようになっています。

プレビュー画面
「インク」のフィルタを選ぶと、リアルタイムのプレビュー映像も線画で表示されるようになります。

フィルタ種類
「コミックブック」のフィルタでは、グラデーションの色数を減らしてフラットな印象にしたカラー漫画のような表示に変わります。

フィルターもリアルタイムで反映され、すぐに効果がわかるので、色々なフィルターを試してみて、一番適していると思えるものを選ぶとよいでしょう。
 撮影時に付加できる要素としては、このほかに「テキスト」、「ステッカー」、「絵文字」があります。どれも、映像内で被写体に貼り付いたように追従して動くので、面白い演出が可能です。

テキストのスタイル
フレーム付きの文字列である「テキスト」のスタイルは全部で29種類用意され、日付や曜日を表示するものは当日の情報が自動的に設定されます。

フレーム
利用したいスタイルのフレームにタッチすると、そのフレームが映像内に表示されるので、必要に応じて文字を差し替え、位置を調整します。ここでは、「アップデート」という文字列を「新しいお知らせ」に変更してみました。

ステッカー
「ステッカー」は19種類が用意されている中から、ひらめきなどを表す電球を選んでみました。テキストのフレームもステッカーも、2本指でタッチして回転するように動かすことで、角度の調整が可能です。

音声認識でキャプションも楽々

「テキスト」と「ステッカー」の位置決めが終わったところで、一度、ビデオ撮影画面に戻り、吹き出しボタンをタッチして「ライブタイトル」の設定画面に移ります。
ライブタイトルというのは、音声認識による自動キャプション生成のことです。キャプションの位置や表示のされ方によって14種類のライブタイトルが用意されていますので、画面構成などを考慮して選んでください。

キャプション

好みのライブタイトルを選択したら、いよいよ撮影の開始です。音声認識が行われる様子を次の動画で示しますが、iPhoneのスクリーンキャプチャ機能を使ってアプリの動作を記録したものなので、音声は含まれていないことに注意してください。

ナレーションの撮影を開始する

ナレーションの撮影は、ビデオ撮影画面に戻り、赤い録画ボタンをタッチしながらレンズを見て行います。ボタンから指を離すまで録画が続くので、ここで区切りたいと思うところまでタッチを続けながら撮影してください。すると、話した内容がリアルタイムで音声認識され、キャプションとして記録されます。

タイトルやエンディングは必ずしも必要ではありませんが、それも含めて、文字による告知を動きのあるグラフィックスで行えるのが「ポスター」機能です。ポスターは10のカテゴリーに分けられ、それぞれ5〜10種類ずつデザインが用意されています。また、ライブタイトルと同じく、赤い録画ボタンをタッチしながら話すと、音声認識されたキャプションをつけることが可能です。

さらに、すでに撮影済みの写真や動画も「ライブラリ」を選ぶことで取り込むことができ、音声認識によるキャプションを付けられます。ただし、動画内の音声を認識する機能はなく、あくまでも赤いボタンで動画を再生中に録音した音声が対象です。
なお、もしライブタイトルの認識結果に誤りがあった場合には、後から編集して修正できるようになっています。

ポスター機能
「ポスター」では、動きのあるグラフィックスと共に、文字による告知ができます。

ライブタイトル機能
また、「ライブタイトル」機能と組み合わせて、ナレーションやキャプションを被せることも可能です。

ライブラリ機能
「ライブラリ」を選ぶと、撮影済みの写真やビデオを取り込むことができ、やはりナレーションやキャプションを付けられます。

テキスト編集
音声認識では、句読点が抜けたり、英単語などが元の綴りで表示されることがあるため、修正が必要な場合があります。キャプションが間違って認識された場合には、録画済みのサムネールの中から、誤認識を含むものにタッチしてください。すると、その部分の動画が上部に表示され、改めてライブタイトルのボタンにタッチすると、このようにキャプションのテキストが抜き出されます。

テキスト編集
そのテキストにタッチすると、一般的な編集画面が表示されるので、必要に応じて修正します。この場合には「こちらが新製品3D printのミニ四駆ですかバインド号です」という認識結果を「こちらが新製品、3Dプリントのミニ四駆レースカー、バインド号です」に直しました。

映像にBGMを付ける

全体の流れができたところで、BGMもつけてみましょう。ビデオ撮影画面で右上の音符にタッチすると、サウンドトラック(アプリが用意した音楽ライブラリ)かマイミュージック(自分の音楽ライブラリ)のどちらかを選んで楽曲リストを表示できるようになります。

BGM選択
BGMの選択画面では曲名にタッチして試聴し、気に入ったら左上の「<」で前の画面に戻ります。

ミュージック画面
するとBGM付きで動画のプレビューができるので、結果が満足なものであれば、右上の「完了」にタッチしてビデオ撮影画面に戻ってください。その画面右下の共有ボタンから「ビデオを保存」を選ぶと、動画を写真アルバムに保存できます。

ボイスチェンジャーアプリを使って音声を変える

このようにして主要な機能をひと通り使った動画ができあがりますが、ナレーションに自信がないという方もあるでしょう。そういうときには、サードパーティ製のボイスチェンジャーアプリを使うと、ビデオの音声を変えることができます

ここでは、Voice Change.rというアプリを利用してみました。完全無料なので選べる声質は最小限ですが、アプリ内課金のあるアプリであれば、もっと声のバラエティを楽しむこともできます。

字幕やテロップ付きの動画が簡単に作れる編集アプリ「Clips」
完成した動画をサードパーティ製のボイスチェンジャーアプリから開くと、声質を変えて保存することが可能です。

最後に、完成した動画をご覧ください、冒頭にミニ四駆レースの1シーンを加え、最後にも別のポスター画面を追加してみました。
今回は説明のために単純化しましたが、もちろん、もっと作り込むこともできますので、ご自身で色々と試されることをお薦めします。

Clipsの基本的な機能を使って制作したサンプル動画です。

まとめ

このように、Clipsを使うと、ナレーションやキャプション付きの動画を、ほぼリアルタイムで作っていくことが可能です。また、TrueDepthカメラを搭載したiPhone X以降のモデルに限られますが、アニ文字を使って自分の分身や他のキャラクターにナレーションを担当させることもでき、サードパーティ製のボイスチェンジャーアプリと組み合わせて、ほぼバーチャルな人格を使った動画制作も可能になるのです。
clipsの使い方
Android版がないのは残念ですが、Androidユーザーも身近にiPhoneユーザーがいたら、ちょっと借りて試してみてください。きっと驚かれると思います。
そして、ナレーションや顔出しは苦手という方も、ぜひ説明動画に挑戦して、ホームページ制作サービス「BiNDup」を使ってWebページに組み込んでみましょう。

次回は、スマートフォンにプラスして揃えておくと重宝するカメラ機材を紹介します。

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  • Clipsは、自分で話しながら商品やサービスの説明を行う動画制作に適している
  • 顔出ししたくない場合には、自分と同じ表情でリアルタイムに動く3Dフェイス=アニ文字が便利
  • ナレーション撮りで声に自信がない場合はボイスチェンジャーアプリが助っ人に

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