このBiND CAMPでも折に触れて採り上げてきた動画の話題ですが、今回は、実際に動画を利用したマーケティングやプロモーションを始めるにあたって必要となる基礎知識を簡単にまとめてみました。
動画配信は無理せず楽しみながら、できる範囲で続けていくことで顧客の維持や新規獲得につながるはずです。初めのうちは、自身の備忘録的な感じで、専門分野やお店の扱い品目に関する知識を動画で残していく程度の気持ちで取り組むとよいでしょう。
ここでは、動画マーケティングが注目される理由や必要な機材、動画制作の手順、公開後の効果の分析方法に触れ、次回でより具体的なアプリの紹介や使い方などを少し詳しく掘り下げていくことにします。
ホームページ作成サービス「BiNDup」などを使い自社でサイト運用している方など参考にしてください。
動画マーケティングが注目される理由
まず、そもそも、なぜ動画マーケティングが注目されているのでしょう?
おそらく読者の皆さんも、たとえばSNSのポストをスクロールしながら見ていると、途中で表示される広告にも動画が増えてきていると感じているのではないかと思います。また、表示された途端に再生が始まるものや、ニュース記事などでテキスト中に埋め込まれたサムネイルにタッチするだけで(つまり、プレイボタンを押さなくても)再生される動画も少なくありません。そして、再生された動画は、最後までといわないまでも、とりあえず見てしまうのではないでしょうか。
それだけ動画というものは、人々の注意を惹きつけ、強い印象を残す情報媒体なのです。しかし、動画はそのような特性を元々備えているにもかかわらず、かつては制作に手間がかかり、配信するにも面倒な手順を踏む必要があるために、テレビ局のような専門業者の独占的なメディアであり続けました。
近年になって、その状況が大きく変わったのには、以下の3つの理由が考えられます。
- スマートフォンとSNSの普及によって、人々が動画を見る機会が飛躍的に増えたこと
- 動画を撮影して編集する環境も非常に身近な存在となったこと
- 能動的に読む必要があるテキストに対して、動画は圧倒的に情報量が多いにもかかわらず、再生を開始すれば基本的に受け身で情報を取得できること
この3要素が揃ったことで、人々は動画による情報提供をごく自然なものとして受け止め、手軽な情報収集の方法として利用するようになったのです。逆に、情報発信する側は、こうした消費者の変化に合わせて、動画を使ったマーケティングに力を入れるようになりました。
動画制作に必要な機材
動画を制作するための基本的な機材として、「撮影ツール」、「三脚(もしくは、それに準じたもの)」、「マイク」、「照明」、「編集用デバイス」、「編集アプリ」の6つが挙げられます。
しかし、ここで気をつけなくてはならないことは、動画マーケティングの目的は、美しい動画作品を作ることではなく製品やサービスの販売につなげることにあるという点です。つまり、最終的にお店や会社に対する視聴者の信用を得てブランドイメージを高めるためのメッセージであって、機材に凝り過ぎて使いこなせないよりは、身近な製品を最大限に使いきるほうが、はるかに効果的で経済的といえます。
YouTubeの事例
たとえば、筆者がYouTubeで登録しているジェイ・サンキーというプロのマジシャンの動画チャンネルは、そのよい例です。サンキー氏は、40万人近い登録者を持つYouTubeの動画チャンネルを、自身のマジック製品の販売や有料セミナーの参加者募集に活用しています。しかし、そうした販売や募集を行う動画の割合はわずかで、大半は、自身が考案し、身の回りの物を使って行える本格的なマジックの実演と種明かしなのです。これは、まさにマジシャンとしての信頼度を高めることを重視した、コンテンツマーケティング的な動画の利用法といえるでしょう。
実際のサンキー氏の動画をいくつか見ていくとわかりますが、その大半は自宅や事務所と思しき場所で撮影され、いきなり本人が登場して話し始める形式になっています。影を見ると複数の照明を使っているシーンも見られますが、天井のライトや窓からの外光だけで撮られたものもあり、編集は最小限で、多少の言い間違いや手順の順番違いがあっても、その場で訂正しながら話を進めていくスタイルです。
それでも視聴数は多いもので30万回以上、平均して1〜1.5万回程度観られており、広告で稼ぐYouTuberではなく、自身のオンラインストアに誘導するには十分な成果を上げているものと考えられます。
編集デバイスと編集アプリについては次回で採り上げますので、他の4点について説明していくと、まず、撮影機材については、突き詰めようとすればキリがない世界だともいえます。しかし、4Kや8Kのテレビ放送向けの映像であれば話は別ですが、一般的な動画マーケティングのメインの配信チャンネルはSNSなどのネットメディアであり、視聴者も自分のスマートフォンで閲覧することが多いことを念頭に置いてください。過度に解像度の高い動画は、編集時の負荷が大きくなり、多くのストレージも必要になります。
適した動画の解像度と撮影機材
動画の解像度の目安
たとえば、iPhone 13 Pro Maxのディスプレイ解像度は2,778 x 1,284ピクセルで、ノート型のMacBook Proでは標準解像度は2,560 x 1,600ピクセル(13インチ)〜3,456 x 2,234ピクセル(16インチ)です。MacBook Proの13インチモデルでYouTubeの動画をフルスクリーン再生すると自動設定では4K解像度のデータが選ばれますが、コメント欄や関連動画などが表示された状態ではHD(1080〜1440p)解像度となります。そして、iPhone 13 Pro Maxでも横長のランドスケープモードではHD解像度ですが、縦長のポートレートモードで観る場合に画面の横幅に合わせて選ばれるのは720pのデータです。
先に触れたジェイ・サンキー氏の動画も最大解像度はHD(1080p)に留めており、一般的にはHD〜2K程度の解像度があれば十分といえるでしょう。また、高倍率のズーム機能を備えたビデオカメラには画角が自由に設定できる利点があったり、最近の動画撮影にも強い一眼レフは用途に応じたレンズ交換も可能ですが、製品とそれを紹介する人物中心の内容であれば、ここ1、2年の間にリリースされたスマートフォンでも十分な撮影機能と解像度を備えています。
カメラや三脚
手元と、人物込みの全景とを同時に収録する場合にはカメラ2台で撮ることになりますが、テレビ番組でも別撮りといって、手元や顔のアップなどを後から別に撮影して編集時に挿入するやり方も普通に行われていますので、1台でやり繰りすることも可能です。
三脚についても、ビデオカメラや一眼レフではそれなりにしっかりしたものが必要ですが、スマートフォンによる机上での撮影であれば、スマートフォンホルダー付きのミニ三脚でも対応できます。
音声や照明
マイクに関しては、スマートフォンのマイク機能はそれなりに高性能なので内蔵のマイクを利用するのが合理的ですが、複数人によるパネルディスカッション的なものを収録する際には、それぞれの前にマイクを置いたり、各自にピンマイクを付けてもらい、ミキサーを使ってミキシングした音声を記録することになります。
収録場所が十分に明るければ照明はなくても撮影は可能ですが、天井からのライティングで顔の影が気になるようなら、リングライトなどで光を補うとよいでしょう。YouTuberの中には、リングライトの中央にスマートフォンホルダーが付いている製品を利用しているケースも見られますが、メガネをかけている場合には、どうしても光源がレンズに反射してしまうので、その場合には、リングライトとスマートフォンホルダーが分離しているものを選ぶほうが調整が効いて便利です。
動画制作の手順とポイント
すでに動画を作られている方であればお馴染みといえますが、動画制作の手順をごく単純化して捉えると、次の4つのステップに集約されます。
- 構成を考える
- 撮影する
- 編集を行う
- 公開する
構成を考える
もちろん撮影や編集もきちんとしていることが望ましいですが、動画マーケティングの観点から最も重要なのは、1の「構成を考える」部分だといえるでしょう。
実際の構成の中には、動画のテーマの決定や、必要に応じてシナリオ作りも含まれます。しかし、すでに動画マーケティングでアピールしたい自身の職種や専門分野があるわけですから、テーマは比較的、楽に決めることができるでしょう。
初回は自己紹介から始めて、これから動画を使ってどのような情報を共有していくのかを説明してもよいと思います。たとえば、ベーカリーならばパンの種類や焼き方の話、パンの種類別の美味しい食べ方などについて語っていくのも1つの方向性です。あるいは、美容室であれば美しいヘアスタイルに対するオーナーのこだわりや、髪型のトレンドなど、普段から自分が興味を持っている話題を掘り下げていくことが、長く続けていくうえで重要となります。
自分の得意分野であれば、シナリオといっても話す要点だけをまとめておき、あとは気楽に語りかけるようにフリートークを行うほうが、楽かもしれません。シナリオを作り込みすぎてしまうと、それを一字一句間違わずに読むことに気を取られ、かえってNGを出す可能性が高くなるからです。
撮影する
撮影は、三脚を使って一人でも行えますが、ライブ感を出すために誰かに手伝ってもらい、手持ちのカメラで顔を手元を交互に写すなど、業種や目的に応じてスタイルを決めるとよいでしょう。
編集を行う
編集も、初心者ほど場面転換のイフェクトなどに凝りがちですが、プロの映像では、ほとんどがシーンとシーンをそのままつなぐ「カット」か、前のシーンと続くシーンがオーバーラップするディゾルブで構成されています。話の内容自体が面白ければ、編集なしの、いわゆる一発撮りで済ませることもできますし、いずれにしても本業とのバランスにおいて無理なく続けられるやり方が、すなわち、自身の動画マーケティングにおける正解といえるのです。
公開する
動画を公開するためのサービスは、このコラムでも以前に触れたように、ターゲット層別に色々な選択肢がありますが、動画マーケティングでは単にバズらせて終わりではなく、しっかり分析を行って次のステップに活かしていくことが必要となります。その観点からは、アナリティクス機能が充実したYouTubeが適しているといえるでしょう。
公開後の分析方法
YouTubeのアナリティクスは、こちらの記事でも採り上げたことがありましたが、YouTube Studio内で提供されている動画視聴傾向の分析機能です。分析対象となる期間(デフォルトでは過去28日間)を設定して、自身のチャンネルと動画の視聴回数や総再生時間、チャンネル登録者数の推移などを、事細かに確認することができます。
ただし、再生回数が少ないと、視聴者データが不足しているなどの理由から各指標が表示できない場合があります。そのため、動画の公開直後ではなく、週に1回や月に1回などのペースで確認していくとよいでしょう。
6つの指標をチェックする
この中で、マーケティングの観点から重要なのは、YouTubeアナリティクスの「詳細モード」ボタンをクリックすると表示される、「視聴者の性別」、「視聴者の年齢」、「地域」の情報や「トラフィックソース」、「その他」メニュー内にある「再生場所」、動画の「その他の統計情報」メニュー内にある「平均視聴時間」です。
視聴者の性別、年齢、地域を見ることによって、自身の会社や店のメインターゲットである層に動画が届いているかがわかります。
トラフィックソースの情報は、自分の動画を観た人が、どのページやウェブサイトを経由して動画を発見してくれたかを表すものです。また、再生場所の情報では、外部のウェブサイトで動画が紹介されたり、埋め込みで動画が再生された回数がわかります。どちらも、どのようなサイトが自分の動画に興味を持ってくれているかを把握するのに役立つ指標です。
平均視聴時間では、動画を観た人が、どの部分を再生して、どこで再生を止めたかがわかります。たとえば、再生回数が多いのに、動画の最初のほうだけ再生して止めてしまう人がほとんどの場合には、動画の冒頭でもっと先を観たくなるような工夫が必要だということが理解できるわけです。
まとめ
持続可能な動画マーケティングのためには、自分に合った動画の作り方を見つけることが大切です。最初からお金をかけて機材を揃えなくても、すでにあるものを使って何本かの動画を制作してみて、そのまま続けられそうであればそれでよいといえます。そして、足りない要素が見えてきたなら、それを買い足して使いこなし、少しづつ機材を充実させていけばよいのです。
ホームページ作成サービスBiNDupでは、ブロックエディタのウェブサービス系パーツからYouTubeパーツを使うことで、YouTubeでホストした動画を簡単にウェブページ内に貼り付けることができるので、ぜひ動画マーケティングに活用してみてください。
POINT
- 撮影機材に拘らず、身近な製品を最大限に使いきるほうが効果的で経済的
- 動画制作で最も重要なのは、興味を持ってもらうためのテーマ設定とシナリオ作り
- YouTubeのアナリティクスで、公開した動画の関心傾向を把握する6つの指標をチェック