新型コロナウィルス禍の中でリモートワークなどに不可欠な通信インフラの重要性はさらに高まり、各通信キャリアは、さかんに次世代ネットワーク「5G」のアピールに努めています。折しも、5G対応となったAppleのiPhone 12シリーズも発表され、予約・販売状況は、とても好調のようです。
すでにご存知の方もおられるかとは思いますが、今回は、この5Gに関する基本的な情報やiPhone 12シリーズの意義や、5GがこれからのWebページ制作にどのような影響を与える可能性があるかを考えてみます。
「高速なWi-Fi」のような5Gネットワーク
5Gは、通信キャリアによる広告では、高速・大容量という特徴が、最も強調されています。簡単にいえば、大量のデータを短時間で転送できるということになり、理論上の単純計算では、4G LTEの20倍の速度を出すことが可能なため、スポーツ中継などでも複数のカメラからの映像を同時に配信・表示して、好きな角度から観られるマルチアングル中継なども実現できるのです。
もちろん、この2つは、5Gによって実現されるモバイルネットワークのポイントであり、実現されればスマートフォンやタブレットデバイスのユーザーにとっての恩恵が大きな部分であることは間違いありません。
しかし、実際の5Gのメリットはそこに留まらず、他にも次のような特徴があります。
- 低遅延
遅延が1/1000秒以下と4Gと比べて1/10となるため、自動運転車などを含めて高い安全性が求められる交通機関の制御や、微妙な操作が必要なリモート手術などの遠隔医療機器を接続するのに適している。また、エンターテインメント分野でも、マルチユーザーゲームなどを行う際に、ほぼリアルタイムでのリモート対戦が可能となり、ストレスのないプレイを楽しめる。
- 多数接続
同時接続数が1平方キロメートルあたり100万台と4Gの10倍の端末をカバーできる。イベントや繁華街、駅前などで一度に多数の端末が接続されても、実用的なネットワークの運用が可能。様々な機器がインターネットに接続されて連携し合う、IoTの世界を発展させるのにも都合が良い。最終的には、モバイルネットワークだけでなく、これまで無線LANでカバーされていた住宅内や会社内のネットワークも、5Gでカバーすることが想定されている。
5Gでは、4Gと基地局数が同じでも、より大量のデータを扱えるのですが、その一方で、特に高速回線用のミリ波と呼ばれる電波は、使われる波長の関係から建物などに遮られやすくなるので、同じエリアであっても4Gよりも多くのアンテナが必要となります。そのため、設備投資も増えることになり、この点がインフラ整備を遅らせる要因ともなっていました(ちなみに、現在各キャリアが5Gとして提供しているのは、既存の通信技術を応用して比較的簡単に実用化できたSub6と呼ばれるもので、ミリ波に比べると通信速度は劣ります)。
5Gに対応したiPhoneの登場が待たれていた理由
5G対応エリアが、現状では、エリア(面)というよりもスポット(点)という状況にあるもう1つの理由は、対応端末の数です。インフラを整備しても、5Gに対応したスマートフォンなどの端末数が少なければ、5G契約をするユーザーの数が伸びず、設備投資を回収できなくなってしまいます。
しかし、消費者から見ると、たとえば自分が住んでいる地域で5Gネットワークが使えないのでは、5Gのスマートフォンを買う動機が弱くなってしまうので、両者はニワトリとタマゴのような関係にあり、膠着状態が続いていました。
各キャリアは、とりあえず先に5G対応を果たしたスマートフォン製品を軸に、5Gへの乗り換えを進めてきましたが、本音では、この秋に発表されたiPhone 12シリーズの登場を心待ちしていたところがあるといえます。iPhoneユーザーは、他メーカーのスマートフォンユーザーに比べて、新しい技術や機能に対する積極性が強く、5Gが使えるエリアが限られていても、他に魅力的な特徴があれば、買い替え需要に期待できるからです。
実際に蓋を開けてみても、iPhone 12シリーズの予約・販売状況は好調で、全世界のスマートフォン市場全体が前年同期比10%減となる中、AppleだけはiPhoneの販売台数が同4%増になると、調査会社のCounterpoint Researchでは見ています。
また、昨年のiPhone 11シリーズは9〜12月期の買い替え需要が大きかったのですが、iPhone 12シリーズは例年よりも発売時期が遅かったにもかかわらず、同時期にそれを上回るの出荷台数が予想されています(しかも、原稿執筆の時点では、日本での人気が特に高いと思われるiPhone 12 miniや、最も高機能なiPhone 12 Pro Maxの予約受付は、まだ始まってもいないわけです)。
iPhone 12シリーズの魅力
iPhone 12シリーズの魅力は、5G以外にも、独自チップのA14 Bionicによるスマートフォン分野でトップの処理性能や、全モデルが超高解像度で色再現性に優れたSuper Retina XDRディスプレイ、高度なコンピューテーショナル・フォトグラフィー(AIによって、撮影状況によらず自然で美しい撮影結果を実現する技術)などが挙げられます。
そして、iPhone 12 miniは、基本的に12と同じ機能をよりコンパクトな筐体に収めたことで小さなスマートフォンを求める層にアピールし、iPhone 12 ProではLiDARと呼ばれるリアルタイムの空間スキャナ機能が付加されて、暗い場所でも正確なオートフォーカスを実現したり、よりリアルなAR(拡張現実)体験を可能としているのです。
さらに、トップモデルのiPhone 12 Pro Maxでは、望遠レンズが従来の2倍から2.5倍へと倍率アップされ、センサーシフト式という一眼レフ並みの手ぶれ補正機能も装備されました。Proモデルであれば、よりきめ細かな色で明るく、コントラストの高いDolby Visionによる動画を最大4Kで60fpsで撮影することも可能です。
ここまで来ると、プロ並みの静止画・動画撮影をiPhoneだけでこなせることになり、Webのコンテンツ制作ツールとしての有用性も一層高まりました。特に、ライティングの手間をかけなくても美しい写真が撮れることは、本業の合間を縫って、自分の会社や店舗のためにWebページを作っている人たちにとって朗報といえるでしょう。
これから、iPhone 12シリーズの販売と5Gネットワークのインフラは、二人三脚のような関係で、互いに伸びていくものと考えられます。
5Gによって変わるWebページのあり方
5Gの普及は、Webページのあり方にも大きな影響を与えていくことでしょう。それは、過去のネットワークの進化とWebページの関係を見ても明らかです。
ネットワークが遅かった時代のWebページは、テキストや静止画が中心で、動画が含まれていてもサイズが小さかったり、容量を減らすために画質を落としていました。それが、今では、動画も普通に用いられるようになり、かつては手順を文字の説明と写真で見せていたレシピサイトなども、料理の作り方を動画で説明するようになっています。
実際にも、特に若い人たちは動画を通じて情報を吸収することに慣れており、Webの広告なども動画を活用するケースが増加してきました。5Gの時代には、さらに高画質でサイズの大きな動画でもストレスなく扱えるようになるため、Web広告なども、そうしたリアルな動画を活用して細部まで克明に描写するような作り込みが当たり前になると考えられます。
カジュアルユーザーの場合には、そこまでシビアに考える必要はありませんが、Webサイトを閲覧する人たちが、いつでも、どこでも高画質な動画を観ることができ、また、観たいと思うことが普通になるという点は意識しておいたほうが良いでしょう。
また、これまでは通常の動画よりもファイルサイズが大きくなることから、全体のダウンロードはもちろん、ストリーミングの冒頭部分だけでも表示されるまでに時間がかかることが多かった360度動画や、VR/AR系のCGも、瞬時に再生や操作を始められるようになります。
今までは、そうしたコンテンツを用意するのも難しいところがありました。しかし、最近では、たとえば360度動画はIQUIのようなペン型の全天球カメラを気軽に持ち歩いて撮影できるようになっています。
また、AR用のデータも、先に触れたiPhone 12 Pro/Pro MaxのLiDAR機能を利用して用意でき、AR Quick Lookを使って、Webページに埋め込むことが比較的簡単に行えるようになりました。
ここに、メトロポリタン美術館による実例
まとめ
ということで、5Gの本領が発揮されるまでには、重点的に整備される予定のエリアであっても、少なくともまだ1〜2年はかかりそうです。しかし、すでに動き出しているプロジェクトですから、ここで紹介したような環境が確実に実現されていくことも確かであるといえます。
その時がくれば、Web上には、今よりもはるかに多くの高画質動画を使った情報があふれるようになり、VR/ARを用いたプロモーションなども普通の存在となっていくことでしょう。
そのような状況に備えて、今のうちから、BiNDupで作るWebページにも意図的に動画を増やしていったり、AR Quick Lookを利用して商品を紹介するようなコーナーを用意してみてはいかがでしょうか? そうした試みは、5Gが普通となる将来のネットワーク環境でも必ず役に立つはずです。
作成から集客まで行えるホームページ作成サービス「BiNDup」
POINT
- 5Gは高速以外にも低遅延・多数接続が特徴。よりリアルで微細な表現が可能に
- Webコンテンツでも細部まで克明に描写するような作り込みの動画が増えてくる
- 360度動画やAR用の動画もWeb上で瞬時に操作できるようになる