スマホ1台でできるポッドキャストの始め方|制作&配信方法と成功事例
個人で開設できるインターネットラジオ局のようなポッドキャストは、コンテンツマーケティングにとっても重要な存在となってきています。欧米では、多くの一流ブランドも定期的、あるいは、そのときどきのファッションテーマなどに応じた不定期のポッドキャストを展開しており、日本でもラジオ局や語学教室などによる情報発信を中心に、存在感が高まってきました。
そこで今回は、ポッドキャストの素材作りから編集、配信までをスマートフォンのアプリ1つで行う方法をご紹介しながら、その魅力や成功事例などに触れていきたいと思います。
ポッドキャストとは
ポッドキャストは、もともと、一世を風靡したAppleのデジタル音楽プレーヤー、iPod向けにダウンロードして聴けるトーク番組が人気となったことから、iPodのポッドと、ブロードキャスト(放送)のキャストを組み合わせて作られた造語です。それが今では、Apple自身はもちろん、SpotifyやGoogle、Amazonなどを含む、さまざまなプラットフォームで配信される一大メディアとして確立しています。
ラジオ感覚で聴けるポッドキャストの魅力
音声メディアであるポッドキャストの特長は、通勤・通学・運転中などでも、ながら試聴ができることや、配信者(ポッドキャスター)の姿が見えないことが、かえって隣で語りかけているような親近感を生みだしやすいという点です。そのため、欧米では早くから有名ブランドなども注目して、低コストで効果を上げやすいブランディングツールとしても活用されてきました。加えて、新型ウイルス禍によってリモートワークが増加したことにより、ラジオ感覚で手軽に情報や知識を得る手段としても利用されるようになってきています。
特に日本では、YouTubeその他の動画SNSなどに比べると、まだ参入者が少なく競争が激化していないため存在感を高めやすいというメリットもあり、近年はマスコミやフリーランスのニュースキャスター、タレントなども積極的に取り組むようになりました。
また、こうした動きを後押しするように、ポッドキャスト配信にも力を入れる音楽配信サービス大手のSpotifyはテレビ東京とタッグを組んで、「お耳に合いましたら」という、ポッドキャストを通じて主人公が成長するドラマまで制作しています。ポッドキャストの本場アメリカでも、それ以前から、先のランキングでも上位を占める犯罪ドキュメンタリー系のポッドキャスターを主人公とするドラマ「真相」がApple TV+で配信されるほど、ポッドキャストが根付いているのです。
ポッドキャスト配信の主要プラットフォームと特徴
配信プラットフォームにもさまざまな企業が参入していますが、ポッドキャスターたちはリスナー獲得のために、RSS配信という仕組みを通じ複数のプラットフォームに対して同時配信を行うことが普通です。
代表的な4つのポッドキャストプラットフォーム
オフライン再生や、スリープタイマー、再生速度設定などの基本機能は、ほぼ横並びなので、利用しているデバイスやサービスに応じて使い分けるのが現実的です。逆に、すぐ上にも書いたように、配信する立場からは、なるべく多くのプラットフォームをカバーするほうがよいでしょう。
このほかにも、独立配信系といって、専用アプリでユーザーやリスナーの囲い込みを図っているサービス(Voicy、stand.fm、SPOON、REC.など)もありますが、それらは厳密にはポッドキャストとは異なる音声メディアといえ、課金収入を目指しているため、ここでは取り上げていません。
Apple Podcasts
ポッドキャスト配信の元祖的存在で、主要Apple製品(Mac、iPhone、iPod touch、iPad、Apple TV、Apple Watch)向けに純正アプリが用意されています。2021年4月時点でのポッドキャスト配信市場シェア(Libsyn調べ)は60.01%で、トップのサービスとなっています。
Spotify
音楽配信サービスとして世界最大手企業であるSpotifyもWebサービスとアプリの双方でポッドキャストを配信しています。同じく市場シェアは13.65%で、Apple Podcastsに次いで2位につけています。
Googleポッドキャスト
当然ともいえますが、Androidユーザーに人気のプラットフォームです。Googe Playから無料アプリをダウンロードでき、Appleユーザー向けにもApp Storeで提供されています。しかし、市場シェア(2.3%)的には苦戦しており、YouTube Musicのポッドキャスト機能を強化していく方針が打ち出されました。
Amazon Music
Amazon Music Free、Amazon Prime Music、Amazon Music Unlimited、Amazon Music HDのどのプランでも利用でき、すべて同種のポッドキャストが楽しめます。ポッドキャストサービス単体でのシェアは不明ですが、母体のAmazon Music自体のシェアはSpotify、Appleに次いで3位となっています。
なお、これらのプラットフォームのポッドキャストランキングは、こちらで確認できますので、参考にしてください。日本では情報系や教養系のポッドキャストが人気である一方、アメリカのApple Podcastsのトップ100を見ると、先のドラマにもなった犯罪ドキュメンタリー系ポッドキャストが上位を占めており、お国柄の違いが表れています。
スマホ1台でできる音声制作・配信方法
ポッドキャストの概要はわかったけれども、動画よりは簡単とはいえ、制作や配信にそれなりの機材や手間が必要なのでは? と思われている方もいるかもしれません。もちろん、マイクやアプリを駆使しているポッドキャスターも少なくないですが、実は、スマホ1台とアプリ一つあれば、ポッドキャストの制作・編集・配信まで行うことが可能です。
スマホアプリ「Anchor」を使って制作・配信する
そのアプリとは、Anchorというもので、Spotifyが買収したほど優れた機能を持っています。また、配信後のアナリティクス機能も内蔵しており、実際の反応を確かめることが可能です。
では、簡単に音声素材の準備から配信までの流れを見てみましょう。
App Store、またはGoogle PlayからAnchorアプリをインストールしてユーザー登録などを終えると、すぐに選択肢が3つ表示されるので、「新しいポッドキャストを作りたい」を選ぶと、手順がわかりやすく提示されます。
続いて、実際の作業に入るのですが、その際にも4つのステップでできることが示され、ともかく作ってみようという気にさせてくれます。そして、画面下の「+」マークをタップすると、いよいよ音声素材の録音です。Anchorでは、スマートフォンのマイクを使ったレコーディングでも十分な音質が得られるとしています。外部マイクは、対談や座談会など、複数の人間が発言するようなポッドキャストの場合に購入を考慮すれば良いでしょう。
丸で囲った「録音」ボタンをタップし、内蔵マイクの仕様を許可すると、すぐに録音が始まります。リモートで一緒に話す相手を招待することも可能です。また、言い間違いや言葉がつかえた箇所には、「フラグを追加」ボタンで印をつけることで、編集が容易になります。録音を停止するとプレビューファイルが作られるので「…」ボタンでメニューを呼び出して編集に移ります。
録音の前後に余計な部分があれば「開始/終了点をトリミング」、途中の不要部分や音声ファイルの分割は「オーディオを編集する」で行います。再生ボタンをタップして音を聞きながら該当箇所を見つけ(または、フラッグした箇所を探し)、「スプリット」ボタンで分割してください。その後、不要部分を長押しするとメニューが出て削除することができます。
「保存」をタップすると、編集後の音声を1つのファイルにまとめるか、あるいは分割数に応じた個別のファイルにするか確認されるので、目的に応じて選択してください。
音声素材は、ひとまずライブラリに保存されます。ここでは、メインと名づけた音声ファイルを、冒頭の内容紹介と語りの部分に分けたので、それぞれ(1 of 2)、(2 of 2)として保存しました。ここから「+」ボタンをタップして、実際のポッドキャストに使うものをエピソード(1回分の番組)に追加していきます。この場合には、新規のエピソードなので「新しいエピソード…」を選びました。
さらに「+」ボタンをタップして別の素材をエピソードに追加します。
ラジオなどでは、トークの前にイントロの音楽、トークの区切りで場面転換の音、最後にアウトロ(締めの音楽)が流れることで、番組の体裁を整えています。Anchorにも「間奏」という名前で音楽素材が揃っていますから、試聴して自分のプログラムに合いそうなものを追加しましょう。エピソードのプレビューでは、「…」をタップすると、いつでも素材の順番を入れ替えることができます。
素材と順番を整えたら「公開する」ボタンをタップしてください。
続いて、公開に必要な情報を入力する画面が表示されます。指示に従って、エピソードのタイトルや内容説明を記入したり、カテゴリーや言語をメニューから選択していきましょう。
すると、SpotifyとAnchor自体の配信プラットフォームに対して、エピソードが自動公開されます。たとえば、今回、サンプル的に作った「Apple、ここだけの話」は、イントロ、場面転換の音、アウトロの入り方などを確認してみてください。
また、他のプラットフォームに対しては、RSS配信を使って公開しますが、その方法は個々に少しずつ異なるので、「ポッドキャストを配信する」の情報に従って作業することになります。
音声の制作ノウハウ、分かりやすく伝えるコツ
さて、ポッドキャストは動画配信に比べてハードルが低いのですが、ビジュアルなしに音声のみで情報を伝えるという特性上、注意すべき点もあります。つまり、聴いただけで内容を理解してもらえるように意識しておくことが必要なのです。
たとえば、
- 難しい熟語などは避けて、平易な言葉を使う
- 「あれ」とか「それ」というような指示語を多用しない
- 1つ1つの文章はなるべく短めに話す
- 言いにくいところがないかを確認し、必要に応じて言い回しを調整
などです。
もちろん、ポッドキャスト全体のテーマや、対象となるリスナーによっては専門用語も使うことになりますが、固有名詞や製品名のところで心持ち区切るようにして話すなど、キーワードが際立つようにします。
そして、事前に原稿を用意する場合には、録音の前に声に出して読んでみて、つかえやすいところや言いにくいところがないかを確認し、必要に応じて言い回しを調整しておきます。
さらに、録音のときに緊張してしまうという人は、大勢のリスナーに対して話をしているというよりも、1人のリスナーが目の前にいると想定して、その人に語りかけることを意識すると、スムーズに話ができるでしょう。実際に、自分の会社やお店のスタッフ、ときには製品・サービスの愛用者や常連さんなどにも参加してもらい、掛け合いで話を進めていくのも1つの方法です。
人気のポッドキャストの事例
ではここで、スモールビジネスにも参考になりそうなポッドキャストの事例を2つ紹介しておきましょう。ちなみに、どちらも先に挙げた主要なポッドキャストのプラットフォームに対して広く配信されているので、お好きなプラットフォームで検索してみてください。
北欧、暮らしの道具店による「チャポンと行こう!」
日用雑貨やインテリア雑貨を扱っている「北欧、暮らしの道具店」の店長さんとスタッフが、「女湯トーク」という意外なコンセプトで配信しているポッドキャストです。
自らインターネットラジオと銘打っているように、リスナーからのおたよりの紹介を中心としてリラックスムードで話が進行していく内容になっています。
クラフトビールの製造・販売「よなよなエールの空想ビアパブ」
ユニークなクラフトビールの製造・販売で知られる「株式会社ヤッホーブルーイング」が、仮想的なビアパブを開店したというコンセプトで配信しているポッドキャストです。
あるときはマスターの独り言のように、またあるときには常連さんとの会話のように、ちょっと役立つ豆知識や、ビールに関する偏愛トークが繰り広げられます。
どちらも、軽妙なトークで親しみやすい内容が提供されていて、リスナーも一緒にお湯に浸かっている感覚、あるいはパブのカウンターに座った気分で、耳を傾けることができます。こんな風に、自分の会社やお店、ビジネスのスタイルに合わせてコンセプトを決めることによって、特色あるポッドキャストを続けやすくなるといえるでしょう。
まとめ
このようにポッドキャストは、スマホアプリ1つで素材作りから編集、配信まで完結でき、顔出ししなくても成り立つ気軽で有効なメディアです。
効果的な使い方としては、ポッドキャストで触れた話題を深掘りした内容を、BiNDupで制作したホームページやブログに掲載してアクセス数を増やすことが考えられます。
その場合、事例紹介したポッドキャストでも行われていたように、説明部分に自分のWebサイトのリンクを貼り、「(ポッドキャスト内で触れた)商品の購入はこちら」とか「関連資料をこちらからダウンロードできます」のように誘導することになりますが、逆にブログの話題の続きをポッドキャストを使って肉声でお届けするような双方向の運用もできるでしょう。
もちろん、すでに十分なPVのあるWebサイトをお持ちであれば、そこで直接ポッドキャストをホストすることも可能です。しかし、動画に対する動画SNSのように専門サービスを活用するメリットは、サーバー容量を気にせずに済み、ポッドキャストを探している人の検索にもひっかりやすくなるという点にあるので、利用しない手はありません。
まずは試しに1本、ポッドキャストを制作して公開し、自らのWebサイトとリンクしてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?
POINT
- 制作側も顔出しせず、ながら聴きもできるポッドキャストは気軽に楽しめるコンテンツ
- スマホアプリを使えば音声の録音、編集、音楽の追加、公開までできる
- ポッドキャストのコンテンツをブログ記事やサイトに貼ることで双方向で集客ができる