クラウド上にドキュメントを保存できるクラウドドライブ、クラウドストレージはすっかり一般的になり、個人のあいだでも幅広く利用されるようになりました。一方で、ビジネスの分野では「クラウドプラットフォーム」や「クラウドコンピューティング」といったサービスの利用が進んできています。クラウドプラットフォーム、クラウドコンピューティングとはどんなサービスでしょうか? また、その代表格で世界のマーケットシェアで3割を超えるAWSはなぜ人気なのか?を、初心者向けに紹介していきます。
そもそもクラウドコンピューティングサービスとは?
最近、AmazonのAWSや、GoogleのGoogle Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureなどの名称について耳にすることが増えてきたかと思います。これらは「クラウドプラットフォーム」あるいは「クラウドコンピューティング」と呼ばれるサービスで、個人から大企業まで、ストレージからビジネスのサービス基盤まで幅広く利用されています。
まず「クラウドコンピューティング」とは何か、確認しましょう。クラウドコンピューティングとは、インターネット上にあるコンピュータネットワークを利用し、コンピュータのリソースをオンライン(クラウド上)で利用するコンピュータの利用形態です。具体的には、オンラインストレージ、Web制作サービス、会計・表計算サービスなどといった多様なアプリケーションをWebやスマホアプリで使うこと(SaaS)、Webサーバーやデータベースサーバーなどプラットフォームをクラウド上で構築・運用すること(PaaS)、あるいは、様々なOSをインストールして環境を構築するためのコンピュータや、回線ネットワークなどのコンピュータやインフラをクラウド上で構築すること(IaaS)などが挙げられます。
IaaS、PaaS、SaaSの概念をまとめた図を以下に示します。
SaaS、IaaS、PaaSがこれまでと違うところ
SaaSのようなクラウドサービスなない時代は、パソコンにソフトを個々にインストールして使うのが一般的でした。クラウドになってパソコン環境の管理やアップグレードなどのメンテナンスの手間がなくなった他、データもクラウドで保存できるので紛失やトラブルによる破壊などの心配も減りました。
PaaSやIaaSについては、これまではレンタルサーバーやハウジングサービスを契約し、そこにサーバーソフトをインストールしたり、機材の購入が必要です。さらに、レンタルサーバーやハウジングは実際のコンピュータの一部または全部を借りたり購入するため、契約ごとにハードウェアの選定から購入から納品、設置、設定やメンテナンスなど手間がかかります。IaaSはこれをオンラインからボタンクリックですぐに用意できるようにしたサービスです。実際にサーバーを1つごと購入するのではなく、大規模なコンピュータネットワークを利用して、そこに仮想的なコンピュータやインフラを配置するのです。使いたいサービスを、その日にすぐ使えるようになるIaaSやPaaSのサービスは、非常に手間が省けて便利だということがわかります。
サーバーを購入して運用すると、部品を選定したり、技術担当者は設置に立ち会ったりと仕事がそれだけ増えるため、クラウドコンピュータを利用することは業務効率化が大きくアップします。
世界シェア1位のIaaSであるAWSとは
IaaSの利用は年々増えています。2021年には前年比で41.4%も世界市場規模が増加したそうです。このIaaS分野で34%のシェアを誇り、世界首位を維持しているのがAWS(Amazon Web Services)です。ちなみに、2位はMicrosoftでこの2社で60%のシェアを占めます。3位はAlibaba、4位はGoogleと、世界の強豪数社が市場を席巻しているとも言えそうです。
ただし、AWSの提供するクラウドコンピューティングサービスは実に240以上あり、インフラを提供するIaaSの分野だけでなく、データベースやAIなどのプラットフォームも提供しており、PaaSでもあります。例えば、AWSでもっともよく使われているサービスは、クラウドサーバーの「Amazon EC2」、オンラインストレージの「Amazon S3」、サーバー側の処理をサーバーなしで実行できるプログラム(関数)を作成する環境「Amazon Lambda」、リレーショナルデータベースを構築する環境「Amazon RDS」があります。
AWSが人気の理由
AWSのサービスは240以上もあり、このように、AWSではサービスが細かく分かれているため、必要なものを組み合わせて使うことができます。必要な機能を必要な規模で導入できることで、スピーディなだけでなく運用コストも大きく下げられることも人気の理由です。AWSは基本的に使った分を支払う従量制になっており、サーバーの利用時間、リクエスト数などで細かく料金が換算されるので、すべてが込み込みのサービスに比べると多くの場合は運用費を安く抑えられます。
金額的にメリットがあるだけでなく、急にアクセスが増えた、サーバーの負荷が増えるといったキャンペーンやイベントの際にもサーバーを買い足すことなく、スケーラブルな運用ができるため、安定したサービス運営が可能なことも、開発・運営者から支持される理由です。
ほかにも、セキュリティ面で自動的にサービスをAWS側が必要なアップデートする安心感、バックアップやモニタリティングなども行ってくれます。欲しいサービスがすぐに使えるだけでなく、管理者の手間を圧倒的に省いてくれるなどの面で、支持を得ていると言えるでしょう。
AWSではどんなことができるの?
ではAWSでは、どんなことができるのでしょうか? 仮想のWindowsコンピュータを利用したり、プログラミング環境を持つことから、多くの人が利用するウェブサービスやゲーム、IoTなどまでさまざまなものがつくれます。
AWSの事例紹介を見てみると、任天堂とDeNAが協業したスマホゲーム「Super Mario Run(スーパーマリオ ラン)」や「どうぶつの森 ポケットキャンプ」の基盤データベースに使っています。日本海上日動火災保険の顧客関連やデータ分析、基幹系業務のシステムをクラウド化しています。あるいは、MapFanでは、地図アプリAPIの運用・開発をすべてAWSに移行しました。
IaaSやAWSの概要を知ると、「これは開発者やソフトウェア会社にとっては便利でも、一般の企業や個人の利用には無縁のものかも…」と思ったかもしれません。たしかに、アプリを使うようなSaaSなどに比べたら縁遠く感じますが、必ずしもそうとは言い切れません。もっと身近な例ではS3やLightSailのようなサービスを使い、Webサイトの運用やWordPressサイトの立ち上げも可能です。
一方で、どのようなサービスが必要か、何を組み合わせればいいのか分からなければ、AWSを十分に活用できないことも事実です。これに対して、レンタルサーバーやホスティングサービスには不要なサービスが含まれていたり、使える容量を増やすと金額が突然高くなってしまったりしても、Web運用にだいたい必要なものが揃って互換性も検証済みであることは、AWSでは得られない安心感と言えるでしょう。
AWSのメリットとデメリット
ここまでで、AWSのすごいところをまとめると次のようなことが言えます。
- ハードウェアの調達などが不要で、すぐに仮想サーバーや仮想コンピュータを構築できる
- 必要な機能を組み合わせてサービスやシステムを構築・運用できる
- 機能を使った分だけ支払うシステムのため、運用のコストダウンが可能に
- 負荷が突然増える場合にはサーバーを複製して負荷分散したり、冗長化することが可能
- 自動バックアップや自動アップデート、セキュリティ管理などが行われ、管理者の手間が削減できる
- 利用者が多いため、使い方やトラブル対応などのノウハウが得やすく学習もしやすい
一方で、次のようなことはAWSのデメリットでしょう。
- サーバーやサービス構築の知識が足りないとどう使えばよいのかわからない
- あまり変化がないサーバーを置きっぱなしにしたい場合はメリットが得られづらい
- <レンタルサーバーで利用できるようなWebメールサービスがなかったり、セキュリティ面で脆弱なFTPは禁止されている(sFTPには対応)
AWSの試し方:アカウントを作成すればすぐに使える
AWSの凄さや面白さは、使ってみて、触れてみて体感できる部分も多いかと思います。そこで、「よくわからないけれどなんとなく使ってみたい」人も大丈夫! AWSは、ブラウザからユーザー登録をして、アカウントを作成すれば、すぐに使い始めることができます。また、登録だけであれば、月額は無料です。
サービスを利用開始後は、使った分だけ課金が行われます。注意点としては「テストで立ち上げたサーバーをそのままにしておく」、「テストでアップロードしたデータを置きっぱなしにしたり使わないデータを保存しておく」、「IPアドレスを割り当てて使っていないサーバーがある」などを極力避けること。自分では大して使っていないつもりでも、予想以上に課金されていることがあります。利用を始めたらそれぞれの課金体系もあわせて調べましょう。また、アマゾンが提供するチュートリアルも参考にしましょう。
また、AWSのユーザーアカウントを持っている人は、目黒駅前にあるアマゾン本社内にあるオシャレなコワーキングスペース、Startup Loft Tokyoを無料で利用することが可能だったりもします。利用のレベルは問いません。
いかがでしたか? AWSは、サービスを構築する技術者や運営を行う担当者にとってメリットが多く、また企業としてもAWSを利用することでセキュリティから利用料金までコストを抑えられる魅力的なサービスです。現在は国内で1兆円規模の市場ですが、2025年までに倍増するとの予想もあります。それに連れて、Webサイトの運用や中小企業のデータ管理にもAWSをはじめとするIaaSが利用されるシーンは増えていくと考えられます。
現在使っている社内システムや契約サーバーのメリットやデメリットも踏まえながら、こうした新しいサービスの利用も検討してみるとよいでしょう。
ホームページもクラウドの時代
ホームページが作れるSaaSである「BiNDup」は、HTMLなどの知識がまったくない状態からでもサイトが構築できるサービスです。
日本国内で運営されているCMSで、最大で30日間の無料トライアルが可能であり、有料コースなら専用のサポートを受けながらホームページを運用できます。カスタマイズ性にも優れているため、イメージに合うデザインやレイアウトが可能です。
ホスティングサーバーも付いているためアカウントを作ればその日から試し公開することができます。簡単かつスムーズにホームページを構築したい方は、ぜひ新規申込みを検討してください。
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POINT
- AWSはAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービス
- クラウドコンピューティングサービスは、仮想コンピュータや仮想サーバーなどの機能をクラウドで提供する
- AWSはサービスの数が多く柔軟に組み合わせて利用できセキュリティ面でも安心度が高いため人気