デジタルステージとパッケージと私

皆様こんにちは。ディレクターのコウです。
この度、2018年9月発売の『BiNDup』を最後に、BiNDシリーズに於けるパッケージ販売を終了する事が正式に決まりました。
勿論、BiND自体は今後も進化し続けますが、箱(パッケージ)での販売は現製品を以って一旦終了となります。
既にデジタルステージオンラインショップでは販売しておりませんが、一部の流通で販売されているもので最後になります。

BiNDパッケージ

デジタルステージと云えばパッケージソフトと云うイメージを持たれている方も多いのでは無いでしょうか。
BiNDも2018年9月からクラウドサービスとデスクトップアプリを統合した『BiNDup』として新たなスタートを切り、今後の展開を考えた際にパッケージを製作する必要性がなくなった事が大きな理由となります。
寂しい事ですが、時代の流れなので仕方ないのでしょうか。

BiNDユーザーさんに限らずデジタルステージの製品をお持ちのユーザーさんは、パッケージに愛着を持って頂いている方が多い印象でした。
それは先代社長の平野さんが拘り抜いたモノづくりの精神に共感して下さったからだと思っております。
平野さんが退いた後もその意思を崩さぬ様、出来る限り拘って作り続けたつもりです。
そんな訳で、2007年『BiND for WebLiFE*』登場から2018年『BiNDup』登場に至る11年のパッケージ製作を紐解き乍ら私の視点で語らせて頂きたいと思います。

パッケージの歴史

BiNDシリーズだけでも11本のパッケージが存在しますが、歴史と共に様々な変化が齎されました。

プロフェッショナル版の登場

BiND for WebLiFE* 3

BiND3の時に初めて登場したのがプロフェッショナル版です。
これ以降BiND10に至るまで、プロフェッショナル版とスタンダード版が存在する事になりました。
BiND3の時は基本デザインは一緒で、プロフェッショナル版がくっついている作りでしたが、BiND4以降から完全にモノとしてもカラーも分けて作る流れになり、これがなかなか大変な事になる訳です。

CD-ROMメディアからシリアルカードへ

メディアの移り変わり

これは完全に時代の流れと云うものですね。
初期のBiNDはCD-ROMにインストーラーを入れておりましたが、AppleがROMドライブを非搭載にしてからダウンロードの需要が高まってきました。
徐々にCD-ROMインストーラーの意味合いが薄れ、最終的にシリアルカードに変更する判断を採りました。
この時点でパッケージで販売する意味合いもだいぶ薄れてしまったのだろうと思います。

内製化への完全転換

初期のころからBiNDのパッケージデザインは、三階ラボさん、INSENSEの阿部浩二さん、MARUの杉山さん等社外のデザイナーさんと一緒に作っていました。

オカベ

デジタルステージのパケ野郎ことデザイナー・オカベ

その後、パッケージデザインを得手としたデザイナー・オカベが入社した等の理由もあり、BiND9から内製化が図られる訳です。
社内なので動き易い部分はあるものの、リリース時期はデザインチームもかなり慌ただしいので厳しい部分も多々ありましたが、何とか妥協せず取り組んで来た次第です。

実は存在していた追加テンプレートのパッケージ

Sites Collection

基本的にパッケージはBiND製品本体のみですが、BiND3の時期に異例中の異例で追加テンプレート集『Sites Collection』のパッケージが販売されておりました。
そしてこのパッケージデザインを担当したのが他でもない私(入社1年目)で御座います。
実は例外的に内製しておりましたと。
更に当初はボリューム5までの制作構想があり、そのデザインも進めていた事を資料を見直して思い出した次第です。
記念に載せておきます。

Sites Collection

パッケージ製作の拘り

BiNDの世界観(デザインクオリティの高さや使い易さ)をパッケージに於いても適切に伝えねばなりません。
これぞブランディング。

試行錯誤を繰り返すパッケージデザイン

Webデザインと違ってパッケージは印刷して組み上げられるまでを想定しなくてはいけません。
モニタで観る分には良さげでも、実際に仕上がった時にイメージと違うなんて事は印刷物を作っているとよくある事。
なので、パッケージをデザインし乍ら素材やインク等を幾度も検証して完成まで導いています。
使いたかった紙にインクが乗らなかったなんて事もあり、ヒヤッとする場面もありますが、そんな苦難を経たからこそ仕上がりにはより一層愛着が湧きます。

BiND for WebLIFE* 8

BiND8の時は初の八角形と云う変形パッケージになり、実現が可能かかなり不安でしたが、印刷業者さんにもご協力頂き、何とか設計して実現する事が出来ました。
無難なデザインは幾らでも出来ますが、臆さずチャレンジする事でより新しい領域に踏み込めるのです。

コスト削減により消えていく同梱物

BiNDのパッケージには様々なアイテムが同梱されています。
特に初出のBiND1はコスト度外視で思いつくままに作った結果、今では考えられない程の製作費用になったと云い伝えられております。
平野さんの遊び心がここでも発揮されていた訳ですね。

BiNDパッケージの同梱物

思いを詰め込んだコンセプトブック、ペンやノート、付箋やクリーナー等のおまけも試行錯誤し乍ら作りました。
BiND6の時の付箋を見て驚きましたが、付属品を含めて完全オリジナルでイチから製作しておりました。
この手の物の多くはノベルティとして既製品にロゴを入れて終わるケースが多いので、珍しい事なのです。

BiNDステッカー

ですが、時代と共にソフトウェアはダウンロード版が大半を占め、パッケージソフトのマーケットは縮小傾向に。
必然とパッケージの製作コストが年々削減されていき、クオリティのバランスを取る事が非常に難しくなっていきました。
企業としては当然利益を生まなければいけないのですが、製品のブランディングやデジタルステージのものづくりへの拘りを体現する事も守りたいと常に葛藤がありました。
パッケージのクオリティを下げたくはないので、結果として同梱物を減らす事でバランスを取る事となり、BiND8になる頃にはウェルカムブックのみとなってしまいます。

そんな中、BiND9のプロジェクト中にユーザーさんから、BiNDのパッケージを毎年楽しみにしている事、ステッカーの同梱が嬉しかった事をお聞きしました。
その時期、例年通り予算的におまけの製作は諦め掛けていたのですが、そのユーザーさんの言葉で火がついた我々は、何とか予算をやりくりしてステッカーを復活させたのです。
たった一人のユーザーさんの言葉ですが、この時の迷いを払拭するには充分でした。
その後、BiNDupに至るまでステッカー同梱だけは維持した次第です。

悩ましき店頭事情とデザイン性の攻防

パッケージの帯

店頭事情を考慮すると結構な情報量になる

パッケージをデザインする際にいつも難しいと感じるのが、デザイナーサイドと営業サイドで意見がぶつかる処です。
と云うのも、店頭でパッケージ展開する為には様々な要件を押さえなければならず、デザインのクオリティや斬新さだけを追求する訳にはいかない事情が出てきます。
例えば、店頭で目立つ様にある程度の箱の大きさが必要であるとか、ぱっと見でホームページ制作ソフトである事が判らないといけないとか、細かい処では店舗の値札が貼れるスペースが必要だとか色々あります。
それもその筈、競合ソフトはそもそも製品名が『ホームページ○○』と云うものが多く、パッケージデザインの文字はここぞとばかりに大きく色も目立ちます。
それと戦わなければならない訳です。
そこで、セールス的な情報は帯に集約させて、帯を取ったら美しい姿になる様折り合いを付けたのでした。

そんな長年の攻防がありつつも、店頭でのパッケージの見え方をデザイナーも次第に意識し始め、店頭陳列等も想定したデザインに移っていくのです。

最後まで気を抜いてはいけない最終校正

印刷工場で最終印刷前の調整

BiND7の最終印刷時。パッケージデザイナーのMARU杉山氏が入念に色味をチェック

モニタ上でデザインしたパッケージが勝手に良い感じに仕上がる訳ではありません。
本番と同じ紙に実際の印刷方法で印刷して確認する事を本紙校正と云いますが、それを繰り返し乍らも最終印刷の際は印刷所にも立ち会って細かな調整を行います
「同じインクを使っているのだから同じ色が印刷されるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、その日の湿度レベルで細かな色味が変わってしまいます
最後の最後で意図から外れない様、調整をしてゴーサインが出るのです。
で、朝も早くから埼玉の印刷所に赴く訳ですね。とても眠いのです。

最後に

BiNDup

私が見てきたデジタルステージのパッケージ製作の変遷をざっとまとめてお伝えしました。
紆余曲折はありましたが、いつの時代も常にクオリティを求め、パッケージを手に取ったお客様がワクワクして頂けるものを目指して取り組んでいた事に変わりはありません。
そんな我々のものづくりに対する精神をパッケージを通して少しでも感じて頂けていたなら幸いです。

BiNDは更に進化しますが、パッケージは一旦これまでとさせて頂きます。
この秋からは、別の形で皆さんをワクワクさせられる様、アイディアを練っていきたいと思っておりますのでご期待ください。

パッケージをご愛好頂いた皆様、今まで大変ありがとうございました。

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