先行投資としてWebプロモーションにもっとお金を掛けたいけれど予算の確保が難しいなんて状況は、業務規模の大小を問わず多々あります。大きな企業になってくると、社内で予算を通すために企画書やKPIを立て、次期の予算取りへ掛けることもできますが、数人で運営する零細企業ではやりたい気持ちはあってもない袖は振れないというケースも。
そんな際に注目したいのが、信用金庫や銀行などに融資を受けるときのような複雑な事業計画書や書類の作成が不要で、オンライン経由で申請できる融資です。今回は、オンラインレンディングの基本と、いくつかの主要サービスを紹介します。
オンライン経由で融資できるオンラインレンディング
金融サービスとテクノロジーを掛け合わせた「Fintech(フィンテック)」の発展を契機に、ここ2年ほどで立ち上がってきたオンライン申請のみで融資を受けられるサービスに「オンラインレンディング」というものがあります。
オンラインレンディングは、何より借入にかかる手順が少なく、手軽であることが特徴です。また、提出できる資料(オンライン取引情報など)によっては、利息(金利)が低く抑えられるのもメリットですから、業態や必要な融資額などに合わせ、活用を検討してみるとよいでしょう。ただし、窓口がインターネットに変わっただけの個人融資(審査なしのカードローンや消費者金融)によく調べず申請すれば、大変利子が高くなるので要注意。借りやすいからとサービスを安易に決めることがないように、申し込み前にサービス体系をしっかり調べるようにしてください。
また、「ソーシャルレンディング」というキーワードも最近は聞かれるようになりました。これは、お金の貸し主が特定多数であることが特徴。お金を貸したい人と借りたい人が、ソーシャルネットワークのような場で集っているイメージです。出資金をファンドしたら、サービス会社が審査した先へ分配して貸し出すので、特定の誰かに直接貸して貸し倒れすることがありません。
オンラインレンディングの「信用情報」はデジタル情報
融資を受けたことがある方ならご存じだと思いますが、資金の融資を受けられるかどうかは「お金が返ってくる信頼度」を元に決定されます。融資には必ずこの信用情報(与信)が必要です。たとえば、もともと収入や売上が多い会社や個人は、すぐ借金を返す目処があるので信用が高くなります。従来の金融機関は、過去の売上記録や収入証明書、将来の営業成績目処などの書類をたくさん提出しないと、与信を行ってくれませんでした。
オンラインレンディングでは、与信がデジタル情報に変わります。個人の住所・学歴・年令などをオンラインで送るだけでなく、資産情報(オンラインバンキング)の残高や、ECサイトを持っている場合は場合の売上データ、個人ではSNSのつながりまで信用の対象に入るのが特徴です。オンラインバンキングやネット金融サービスが増えたこともあり、こういった口座を連携するだけでも信用情報を増やすことができるようになっています。
特に、トランザクションレンディングと呼ばれるタイプのサービスは、自社のECサイトの売上データが保証になります。データから見れる売上成績の内容が好ましいほど金利や利用枠も有利になります。
ここからは、注目のレンディングサービスを紹介していきましょう。
1.決済サービスZEUSと連携する「レンディング・ワン」
https://contents.netbk.co.jp/lp/lending/
いわゆるトランザクションレンディングタイプの融資サービスです。書類不要で、即日に入金も可能。決済サービス「ZEUS」のアカウントと連動するだけで借用条件が査定できるほか、返済も決済サービスの売上入金日に行うので確実スムーズです。運営元の住信SBIネット銀行の法人口座を持っていることが最低条件で、個人事業主には対応しません。
決済代行サービスの「ZEUS」に加盟がない場合も、マネーフォワード社のMFクラウドファイナンスを通じて申し込みすることもできます(申込先によって条件が多少ことなります。下記はZEUS加盟店の場合)。
- タイプ:トランザクションレンディング
- 利用可能枠:10万円〜3000万円(10万円単位)
- 金利:1.0%〜18.0%/年(固定金利)
- 返済: 13ヵ月未満/1回、3回、6回、12回返済
2.地銀のローンがオンラインで「MFクラウドファイナンス」
https://biz.moneyforward.com/finance
MFクラウドに登録したデータを提供することで、金融機関でオンラインを通じて即日資金調達ができるサービスです。現在、福岡銀行「ふくぎんビジネスローンファストパス」、福井銀行「ビジネスローンQ-Pit」、GMOイプシロン トランザクションレンディングの3つの金融機関と提携しています。下記の条件は「ふくぎんビジネスローンファストパス」の場合です。
- タイプ:オンラインレンディング又はトランザクションレンディング
- 利用可能枠:100万円以上1000万円以下(1万円単位)
- 金利:5.0%〜12.5%/年
- 返済:12か月以内
3.会計データ1期で融資が可能に「アルトア」
弥生会計の弥生株式会社とオリックス、金融系のAI企業のd.a.t. の3社が参加するスモールビジネス向けの融資サービスです。オンラインレンディングのほか、与信モデルの開発・提供なども主なっています。
融資を受けるには、会計データを1期以上連携できる法人である必要があります。また弥生会計のデスクトップ型のデータを持っている必要があります(今後は弥生会計オンラインに対応する予定です)。データを連係すると、アルトアが審査し、金利が決定します。
- タイプ:オンラインレンディング
- 利用可能枠:50万円〜300万円(10万円単位)
- 金利:3.8〜14.8%/年
- 返済:元金均等返済方式では3・6・9・12 か月、期日一括返済方式3・6 か月(毎月利払い)
4.楽天市場オーナーなら「楽天スーパービジネスローン」
https://www.rakuten-card.co.jp/p/bizloan/
楽天市場に出店のある企業・個人事業主が契約できるローンです。リアルタイム審査ですばやく融資が受けられるのが大きなメリットです。50万円からの融資となっています。法人の場合は、代表者の連帯保証が必要な場合があります。資金の利用用途は仕入れなどに限りません。幅広いニーズに対応できるので、Web制作やサイトの拡充資金にあてることができます。
- 利用可能枠:50万〜3,000万円(10万円単位)
- 金利:3.0〜15.0%/年
- 返済:12〜36回
なお、類似サービスにアマゾンで販売を行う事業者のための「Amazonレンディング」があり、こちらも人気はあるサービスです。ただし、資金使途が「Amazonマーケットプレイスでのビジネスを更に拡大」するためとなるので、今回は詳細は省きます。
5.日本初のAI審査、柔軟性の高い「J.Score」
こちらは企業でなくても借りられる個人向け融資です。日本初の、AIで金利・限度額を審査するのが特徴のJ.Score。ダイアログ形式で質問に答えていき、自分の借りられるお金の額と、年利が決定されます。なお、運営会社は、みずほ銀行とソフトバンクの合弁会社。
資金用とは自由で20歳以上70歳未満で安定収入があれば社員でなくても対象です。楽天モールやAmazonマーケットプレイスでオンライン販売を行っている場合は、その売上情報を入れることで、金利低下などに役立てることができます。
- 利用可能枠:10万〜1,000万円(10万円単位)
- 金利:0.9〜12%/年
- 返済:原則最長10年/1〜120回
6.老舗ソーシャルレンディング「maneo」
現在成立ローン総額が1,298億円を超えた日本で最初にスタートしたソーシャルレンディングサービスです。ソーシャルレンディングは、金融機関や融資会社などがお金を貸し出すのではなく、個人の出資金が貸し出されます。クラウドファンディングに似ていますが、出資者が得るのは商品などではなく、利息となります。
借り手にとってのメリットは、他のオンラインレンディングと同様に手軽にオンラインで融資が受けられることだけでなく、10万円という少額でも借りられる、銀行から借りづらい場合も審査が通りやすいなどがあげられます。また返済期間も長めになっているのも特徴です。ただし、マネオは出資者に利回りを上乗せするので、金利が低く抑えられるとしても限度があります。
- 利用可能枠:10万円〜
- 金利:〜15.0%/年
- 返済:60か月以内(60回以内)
いかがでしたか? はやく手を付けておきたいと思っていたWebサイトの拡充のための資金調達、こんな便利な方法もあるんです。ぜひお役立てください。
POINT
- 銀行や信金でなくてもオンラインで融資が受けられるサービスが増えてきた
- オンラインレンディングは手軽なことに加え提出するデジタル資料の内容で与信が行われる
- トランザクションレンディングはオンラインの売上データによって融資条件が有利に