コンテンツマーケティングって何?:サイトオーナーが意識すべき基礎知識
デジタル化が進むマーケティングの世界で、今、もっとも重要視されているのは、いかにして新規顧客の数を増やし、自社ブランドに愛着を持つ継続的なお客様となっていただけるかということです。
そして、優れたCX(顧客体験)を提供して消費者とのエンゲージメント(結び付き)を深めることが、大企業だけでなく、スタートアップ企業や個人・小グループで運営するオンラインショップにいたるまで、ビジネスを成功させるための欠かせない要素となっています。
そこで、ここでは、その実現のために重要な「コンテンツマーケティング」の考え方を紹介することにしました。サイトオーナーが、顧客との関係性を強化するためのヒントにしていただければ幸いです。
「チラシ」と「店主の話」のどちらを選ぶ?
最初に、ちょっとした喩え話をしてみます。デジタルの世界ではなく、自宅近くの商店街に新しいベーカリーが3つも開店したとしましょう。どのお店も、商品である焼きたてパンには絶対の自信があるようですが、それぞれアピールの仕方が異なっています。
毎日のようにチラシを作って、郵便受けに入れてくるのが、1つ目のベーカリーの店主です。商売熱心で、確かに初めのうちはパンの種類や価格がわかって良かったのですが、少し経つと押しつけがましく感じられるようになりました。しかも、限られたチラシのスペースで、すべてのパンを紹介しようとするので、どのパンを選ぼうか迷うところがあります。
2つ目のベーカリーの店主は、少し無愛想です。美味しいパンさえ作っていれば、黙っていても良さが伝わって売れるはずだと思い込んでいるらしく、宣伝らしい宣伝もせず、商品を並べてお客さんを待っています。口癖は「食べてもらえば、わかるのに…」です。
3つ目のベーカリーは、商店街に来た人の目にとまるようなポスターをウィンドウに貼り出してパンの魅力を発信をしています。その内容は週ごとに新しいものに変わり、旬の商品の紹介もありますが、店主のパンへのこだわりや、原材料の産地を訪ねた旅行記、あるいは、パンの美味しい食べ方の豆知識など、お店とパンの関係がよくわかる話題が中心です。近所の人に聞くと、お店ではパンにまつわる店主の話が面白く、つい長居をしてしまうとのこと。
さて、あなたなら、この3つのベーカリーのどれを行きつけのお店にしたいですか? 最初は、1つ目のお店に飛びつくかもしれません。マニアックな人なら、2つ目のお店もよいでしょう。しかし、長い目で見てお付き合いしたいのは、ほぼ確実に3つ目のお店だと思います。その理由はどこにあるのでしょうか?
消費者に支持されるインバウンド指向ビジネス
少し専門的な話になりますが、マーケティング用語に「アウトバウンドマーケティング」と「インバウンドマーケティング」というものがあります。前者は広告やイベントなどを利用した「プッシュ型の情報提供」、後者はWebサイトやブログなどによる「プル型の情報提供」が基本です。言い方を変えると、アウトバウンドは「押しつけ型」、インバウンドは「惹きつけ型」ともいえるでしょう。ちなみに、SNSは、使い方によってどちらのマーケティング手法にもなりうる中間的な存在です。
上のベーカリーの例では、ただ待つだけの2つ目のお店は論外ですが、1つ目がアウトバウンド指向、3つ目がインバウンド指向のマーケティングをリアルな世界で実践しているケースだと考えられます。
一方的なコミュニケーション手段は敬遠される
過去を振り返ると、世の中にあふれる情報が少なく、また、消費者の情報収集の手段が限られていた時代には、アウトバウンドマーケティングが有効でした。ところが、人々を取り巻く環境が情報洪水の様相を呈し、マスメディア以外にもインターネットを通じて様々な情報収集の方法がある現状では、企業の一方的なコミュニケーション手段とみなされ、敬遠されるようになったのです。
ただでさえ過剰で消化しきれない情報の波にさらされている消費者は、アウトバウンドマーケティングによって押しつけられる情報をやり過ごす傾向にあります。たとえば、録画しておいたテレビ番組を観る場合、ほとんどの人がCMをスキップしていませんか? あるいは、CMの送り手が短い時間で強い印象を与えようとするあまり、インパクトの映像自体や起用された旬のタレントは話題になっても、肝心の商品の名前や特徴が記憶に残らないという、本末転倒な現象すら起こっています。
その一方で、インターネット検索というツールを手に入れた消費者は、知りたい情報を自ら探すことが常識化し、興味深い情報を揃えて潜在的な顧客を惹きつけるインバウンドマーケティング指向のWebサイトやブログに親しみを持つようになりました。そして、情報が的確で役立つほど、それを提供する企業や組織に信頼を寄せる傾向が見られてきたのです。
情報提供側にもメリットあるコンテンツマーケティング
このようにして信頼が得られたWebサイトやブログには、消費者の側から新たな情報を求めて継続的なアクセスがあります。そこで、消費者のニーズを起点にして、それに応えるコンテンツを揃えることでブランドを確立し、最終的に製品やサービスの販売につなげる「コンテンツマーケティング」の考え方が生まれました。
欧米では、2011年ごろからこうした概念が普及し始め、今ではごく普通の存在となったため、あえてコンテンツマーケティングを強調するようなことはなくなりつつあります。しかし、コンテンツを軸にマーケティングを行う流れは今後とも間違いなく続きますし、特に、まだ浸透しているとはいいがたい日本ではこれからが本格的な普及期なので、同業者に先駆けて導入し活用することが大切です。
消費者の購買行動をピンポイントで把握できる
実は、コンテンツマーケティングには、単にPVを増やしてロイヤリティの高い顧客を確保する以上の効果があります。というのは、既存メディアを使う宣伝活動では、実際にどのメディアのどの広告のどの部分に、どれくらいの効果があったのか、本当のところがわかりにくかったからです。
これに対して、Webサイトやブログなどのオウンド(=自前)メディアを利用するコンテンツマーケティングの場合には、記事ごとの読者の滞留時間や、記事内のどこのリンクが商品の購入につながったかなど、消費者の購買行動に関する詳細なデータをピンポイントで把握することができます。そのため、それに基づいて訴求ポイントを絞り込んだり、次期の製品/サービス開発にフィードバックすることが可能となるのです。
冒頭の3番目のベーカリーの例でいえば、店主は、お客さんとの会話を通して商品の評判を確かめたり、好みを把握したり、新作のアイデアをもらえます。その結果、互いの関係が深まってお店のファンも増え、人気商品を揃えて売り上げを伸ばすことができるでしょう。コンテンツマーケティングは、これと同じことをオウンドメディアを使って行うものであると考えれば、わかりやすいかと思います。
これまで、規模の大小を問わず、企業のWebサイトやブログでは、製品情報や会社のニュースのみが扱われる傾向にありました。しかし、コンテンツマーケティングでは、それらの直接的なアピールよりも、自社が得意とする分野のトレンドや将来に向けたビジョン、製品やサービスを支える人々のエピソード、息抜き的な豆知識、さらには読者に対するアンケートなどの多様な要素を盛り込み、常に新しい記事を追加していくことが重要となります。そうすれば、潜在的な顧客に何度もアクセスしてもらうことができ、信頼の置ける情報ソースとして認識されていくようになるのです。
コンテンツマーケティングに求められる要素とは?
では、コンテンツマーケティングを実践するには、具体的にどのような要素が求められるのでしょうか?
マーケティング専門家のアンディ・クレストディナによれば、以下のような18の要素が提示されていますが、そのすべてを一度に満たすことは難しいと考えられます。そこで、自身のビジネス内容に照らしてマッチするものから採り入れていくのが現実的といえるでしょう。
アンディ・クレストディナによるコンテンツマーケティングの18要素とその略称
01 ソーシャルポスト(Sp)
02 ブログポスト(Bp)
03 ニューズレター(Ne)
04 ポッドキャスト(Pc)
05 プレゼンテーション(Pt)
06 ラウンドアップ(Ro)
07 インフォグラフィック(Inf)
08 ランディングページ(Lp)
09 Webページ(Wp)
10 プレスリリース(Pr)
11 ビデオ(Vi)
12 ウェビナー(Wp)
13 インタビュー(Int)
14 リサーチ(Re)
15 ホワイトペーパー(Wp)
16 ケーススタディ(Cs)
17 ブック(Bk)
18 eブック(Eb)
この中には、耳慣れない項目も含まれていると思います。
たとえば、ラウンドアップとは、専門家や識者による「まとめ」あるいは「総括」を意味し、自社の製品やサービスの裏付けとなる情報を第三者の立場から提供してもらうようなイメージです。また、ウェビナーはWebベースで配信するセミナーのことで、リアルタイム視聴のほか、アーカイブされた映像が時間や場所を問わず見られるので、広い層に対する情報発信が可能となります。
さらに、ネット上で音声番組を配信するポッドキャストは、日本でのビジネス利用が今ひとつ進んでいない印象ですが、自動車通勤の時間が長いアメリカでは、有効なメディアとしての地位を確立しました。それと共に、人気が高まっているのはビデオによる情報提供であり、最近では日本の料理レシピサービスも作り方を動画で解説することに力を入れていますし、先ごろ発表されたiPhone 11 Proがスマートフォンとして最高レベルのビデオ機能や画質にこだわったのも、その表れといえるでしょう。
動画共有サイトに自作のビデオをアップし、それをWebページに埋め込んで再生するやり方であれば、サーバー容量を気にせずに利用できますから、まだ動画での情報発信を行っていない方は、このあたりから始めることがコンテンツマーケティングへの近道かもしれません。
記事の管理も求められる
ちなみに、コンテンツマーケティングでは、必要な情報へのアクセスのしやすさが重要となる一方、過去のアーカイブの蓄積と共に常に情報が更新されているフレッシュさも求められます。その結果、増えていく記事の管理を的確に行うことも必要です。
その意味から、Webサイトの優れたインターフェース構築が容易で、コンテンツマネジメントシステムとしての機能も備えたBiNDは、コンテンツマーケティングを指向するオウンドメディアの構築にも適したWebオーサリング環境といえます。
BiNDupで作れるオウンドメディアとは
以下の続編では、上に挙げたコンテンツマーケティングの各要素について掘り下げていきます。
POINT
- 広告のような押しつけの情報よりも、役立つ情報を提供する企業に信頼を寄せる傾向に
- コンテンツを軸にマーケティングを行う流れは普及期なので競合に先駆け行うことが重要
- コンテンツマーケティングには記事だけではなく動画や音声などのコンテンツも含まれる