頻繁な更新作業を要するWebサイト構築には、今やCMSは欠かすことのできない仕組みとなっています。
そこで2018年12月、MdN Design Interactive編集部が、Web制作に携わるクリエイターを対象に「WebデザイナーのためのCMS白書」としてアンケートを実施した集計結果をもとに、現在のCMSの利用動向を紹介していきます。
以下、「MdN Design Interactive」2019年3月29日公開編集記事より転載 ※一部、記事内容の変更を行っています
CMS利用者像
今回のアンケートは、現在CMSを利用したWebサイト構築を行っているクリエイター360人ほどを対象として行っている。まず、制作を請け負っている主なクライアントの企業規模についてみてみると、小規模(1~10人)と中規模(10~100人)で63.5%と大半を占めている(約20%を占める受諾受注無しは、自社サイトと想定される)。つまり、今回のアンケート集計結果は主に小・中規模のWebサイト構築におけるCMS利用動向と考えてよいだろう。
Q.受託している主なクライアントの規模はどれくらい?
次に回答者の年齢層や職種・職歴を見てみよう。年代別では19~25歳が少人数であるが、26歳以上では年代別にほぼ均等な分布である。
Q.あなたの年齢はいくつですか
職種についてはWebデザイナーが34.5%と圧倒的に多く、次に多いのはWebディレクター(10.6%)である。個人事業主(フリーランス)が30%程度いることから、職種を限定しにくい人が多く含まれていると想定される。また、職歴では5年~20年以上でおよそ65%を占め、経験豊富なクリエイターがCMS導入に関わっていることになる。ただし、クラウド型で設定も容易な優れたCMS製品も増えていることから、経験の浅いクリエイターでもCMSを利用しやすい時代となっている。
Q.あなたの雇用形態を教えてください
Q.あなたの職業(職種)は何ですか
Q.あなたの職歴はどれくらいですか
CMSなどのシステム導入に際しては、制作するWebサイトの運用計画などの要件に即して適正な機能性を確保する必要性がある。こういった判断を下すためには、業界経験の浅い人材ではなく、ある程度の制作経験を有している必要がある。ただし、フルカスタムのプログラム開発のように専門のエンジニアが必要とされるわけでもなく、Webデザイナーでも十分に開発に携わることができる。
つまり、比較的コストの抑えめの案件でもボリュームで納品できるのがCMSのメリットである。
CMS製品の動向
次に利用されているCMS製品のアンケート結果を見てみよう。
現在利用しているCMS製品の集計結果では、WordPressが圧倒的であり約75%を占める。次点としてはMovableTypeが16.7%のほか、スクラッチ開発が13.9%と続く。スクラッチ開発はサイト全体というより、ニュースリリースや情報検索など、サイト内の一部コンテンツへオリジナリティ性のある機能としての実装が多いのではないだろうか。その他、インストール型のCMSとしてJoomla、Concrete、Drupal、Xoops、Webサービスとして利用するJimdoやWIX、BiNDupといった有名どころが続く。
Q.クライアントも含め、現在ご自身が管理・運営するサイトのCMSは何を利用していますか(複数回答)
ここで、以前利用していたCMS製品についての集計結果と比較してみよう。過去においてはWordPress(37.3%)に対してMovableType(31.2%)と拮抗していたが、MovableTypeは有償化などのサービス変更によってシェアを大きく落とし、現在のWordPress独り勝ち状況へと至ったのではないかと推測される。
Q.以前、使用していたCMSは何ですか(複数回答)
CMSのお悩みで特に多かった回答は…
[アンケート調査から見えてくるCMS問題/その他の声]
- セキュリティ保守。地方だとセキュリティ保守に費用を払ってもらえない(20代、男性、Webディレクター)
- プラグインがアップデートで使えなくなる(40代前半、女性、Webデザイナー)
- CMSに詳しくない人とシェアで運用する際のラーニング(40代後半、男性、Webディレクター)
- 凝ったUIにしたい場合などのカスタマイズのコスト(50代前半、男性、システムエンジニア)
- ドキュメントが英語、機能が多すぎて必要な情報がすぐに出てこない(30代前半、女性、Webデザイナー)
- テンプレートにデザイン性がない(30代後半、女性、Webデザイナー)
- Webの知識のないクライアントでも簡単に使用できるCMSが欲しい(20代後半、男性、Webデザイナー)
[1]まず求めるのはカスタマイズのしやすさ
今回のアンケートでは「CMSで困っていること」という記述式意見も収集した結果、いくつかの意見に集約された。
ひとつは、デザイン性・機能性の両面があるが
「カスタマイズがしにくい(30代後半、女性、Webデザイナー)」というもの。
「デザインの自由度が低い(20代後半、男性、Webデザイナー)」「CMSのCSSが邪魔をして細部のデザイン調整が困難(20代後半、女性、Webデザイナー)」
といった意見もあるように、デザインにこだわるケースではCSSを柔軟にカスタマイズする必要があるが、そういった機能・インターフェイスが装備されているかどうかはWebデザイナーにとっては重要な選定ポイントになる。
[2]機能に拡張性があるかどうか
機能面では、必要十分な機能性を有している、もしくはWordPressのプラグインのように必要な機能を手軽に拡張できるかどうか。PHPなどプログラムカスタムを行う場合は、信頼性の高いカスタマイズ情報を容易に得られることが要求される。
「プラグインが動作しないときの解決策が見つかりにくい(40代、男性、Web担当者)」といった意見もあるように、
Webデザイナーにとっては敷居の高さを感じるケースもある。とすれば、より重要なことは最初から必要十分な機能性を有していることではないだろうか。
[3]クライアントに安心してもらえるセキュリティか
また「保守性」「セキュリティ」についても問題意識を持っているユーザーが多い。
CMSはWebサイト運用を前提として導入するものであるため、その後の運用保守がどうしても必要となってくる。
しかし「クライアントに保守費用が認められにくい(30代、男性、フロントエンジニア)」などの意見にあるように、システム面での高い保守コストは避けたいところ。 セキュリティ、WordPressなどのインストール型CMSではシステムおよびプラグインのアップデートが必須である。ただし「アップデートによってプラグインが動作しなくなった」などアップデートによる不具合の発生は保守料金も請求しにくいことも関連して制作側の大きな負担となっている。
モバイルアクセスへの意識が高まる
さらに「サイトが重くなりがち(30代、男性、Webデザイナー)」「レスポンスが遅くなってくる(20代、男性、Webディレクター)」など、データベース型CMSには伴いがちな課題を問題視する意見も多かった。一部製品では、検索されたコンテンツを静的データとしてキャッシュするプラグインなどを利用可能ではあるが、経年的に動作が重くなりがちである。解決するには、サーバリソースの拡張なども有効であるため、一概にCMS側に要求されるものでもないが、モバイルアクセスが主流となりつつある現在では、GoogleのAMP(Accelerated Mobile Pages)への対応なども機能性として求められてくるだろう。
【結論】
総じて、CMS製品に求められるのは「カスタマイズ性」「保守性」「セキュリティ性」であり、CMS製品を選択する上での重要なポイントである。つまり、必要十分な機能性を有しながら、柔軟なデザイン的なカスタマイズ性を有し、同時に安定かつ低コストでの保守性・セキュリティ性能を有していることが優れたCMSの条件である。特に後者においては、アップデートなどの作業をクリエイター側で行うのではなく、サービス側で提供するクラウド型のCMSに利点があるだろう。
代表的なクラウド型のCMSと言えば、WIX、Jimdo、Weebly、BiNDupなどが挙げられる。そこで、次のページでは、昨年、クラウド型CMSへと刷新され、デザイナーでも簡単にWebサイトを構築・運用できるBiNDupを紹介したい。
POINT
- コストの低い受注案件の場合、エンジニアなしでデザイナーだけで納品できるCMSはメリット
- システム込みのプラグインはアップデートの際に不具合がでると対応できない落とし穴も
- カスタマイズ性がありながら、セキュリティ・保守面で安心のCMSとしてBiNDupがある